全自動チューンナップマシン「Jupiter X」に板を入れたら驚きの結果に!!

さて、いきなりだがみなさんは今季、業界内で話題を呼んでいるジュピターX(Jupiter X)をご存じだろうか。

平原◯香のアレではない。
WAXが綺麗に塗れるFUTU◯Eではない。

タイトルで完全にネタバレしているのだが、オーストリアのウィンターシュタイガー社が開発した、全自動チューンナップマシンである。
ジュピターXは
●全自動ボーダーカット
●滑走面のクリーンナップ
●トップ、センター、テールのサイド・ベースエッジの角出し
●ストラクチャーを入れる
●ベースエッジポリッシング鏡面仕上げ
●ワクシング
までのチューンナップを全て自動で行ってくれる最新鋭のマシンだ。

ジュピターXの凄さとは

チューンナップというとこれまで人の手を介さなければできない繊細な職人の作業というイメージだったが、ジュピターXは設定さえ機械に読み込んでおけば最大1時間に70ペアスキーの処理が可能というトンデモない代物。個人の持ち込みの場合、板の状態やメニューよっては即日渡しもできる。
さらにこのマシンの最大の長所は、エッジの角出しやストラクチャーの深さ細かさなど指定できるため、ほぼ自由自在にチューンナップできるというのだ。

このマシンが置いてあるのが、新潟県湯沢町にあるクレブスポーツ内にある「ゼブラチューンナップファクトリー(以下ゼブラ)」だ。もともとレンタル業が盛んなゼブラが、3万台を超えるレンタルスキー・スノーボードのチューンナップをするために導入したものなのだが、なんと我々一般ユーザー向けのメリットも大きいのだ。
例えば湯沢町に冬、滑りに訪れた際に注文のタイミングがよければ、サッとその場でチューンナップして滑りにいく、ということも可能。

そしてさらに驚きなのが、このジュピターXは世界に1台だけしかない。エッジの角出しだけ行ったり、滑走面の研磨のみを行う「ジュピター」は世界に6台あるのだが、全てのセクションが一体になって、「X」の称号がつくマシンはゼブラにしかないのだ。

そんな業界を騒がせている世界でまだ1台しかない最新鋭機械を、我々も体験できるというのであれば取材しない手はない。
実力はいかほどのものか、編集部が体験しにいってみた。

実際に持って行って診断

そんなこんなでゼブラに取材依頼の電話をしてみたら快諾してもらい、
「実際に板を見ながら診断しましょう」
ということなので、自前のスキーを持って行った。2シーズン使って一度もチューンナップしていないスキーだ。

持って行って改めて自分のスキーのソールを見てみると、なんだか申し訳ないやら恥ずかしいやら、「ちょっとあなたはホントにスキーメディアの編集部ですか?」と疑われてもおかしくないほど管理が成っていない。大小の傷があり、エッジも錆びている。というかレールに入るので、もはや意図的な傷が足元にたくさんついている。

ソールには無数の細かい傷
左足のノーズ側には石を踏んだような大きな傷
エッジはところどころ錆が浮き出ている

「これって綺麗になるんですか……?」
恐る恐る聞いてみた。
「ある程度の傷は綺麗になくなりますよ!」

と爽やかに即答してくれたのはジュピターの責任者である須田さんだ。

レールに入った際のソールの傷は綺麗になるが、石を踏んだような大きな傷はうっすら残るかもしれないとのことだった。要はソールを磨いて傷ついた面を研いでいるので、磨き過ぎれば板の耐久性そのものに影響してしまう。ソールは綺麗になったが薄くなってスキーが壊れてしまった、では本末転倒なのだ。

また、レールの影響で丸まった足元のエッジ部分も完全には角出しできないかもしれない、とのことだった。これも同じくエッジを磨きすぎて、エッジそのものがなくなっちゃいました、ではチューンナップにならない。

なので、どこまで、どのようなチューンナップが板に最適かジュピターXに入れる前に綿密なマテリアルチェックをする。

その際にどんな場所でどのような滑り方をしているのか。という個人の嗜好性も加味して設定を提案するのだとか。この診断が、理想の板にするためにはとても大切。

エッジの状態、板の歪みをトップからテールにかけてチェック
事前に記入する申込書

今回は話し合った結果、

・まずはソールを綺麗にフラットにすること

・サイドエッジを88.0度、ベースエッジを1.5度にすること

・ストラクチャーを入れること

というざっくりだがこのような方針でメンテナンスすることにした。このプランはソールのフラット研磨、エッジの研磨・角出し、そしてストラクチャーを入れるプランでしめて12700円也。

持っていったスキーが生まれ変わった……

ジュピターは全長8.35mの体躯のなかにこのような機械が設置されている。

左端にあるラックに板をかけると自動でラックが回転して、マシンの中に運ばれる。マシンの中でコンベアのように板が一本ずつ左から右へ流れていく。そしてまた右端のラックから出てくるという流れだ。

まず最初に左側のコントロールパネルからどのようなチューンナップをするか設定する。板の形状、送るスピード、滑走面やエッジを削るストーンの回転速度。またシーケンスを設定して、進行方向からだけでなく、バックして研磨するなどことこまかに設定ができる。ジュピターXのメリットは早さだけでなく、正確さにもある。板を真っ直ぐに挿入でき、一定の圧力、速度でチューンナップが可能だ。

コントロールパネルでチューンナップの内容を設定

まずは一度ソールを一度綺麗にするため、ソールのみを研磨して様子をみてみる。

ジュピターXは一度で全ての行程を行えるが、一般ユーザーの板はチューンナップの仕方がそれぞれ異なるため、ソールの研磨とエッジの角出しに関して、その都度仕上がりをみながら作業する。

水を吹きかけながらソールを研磨するストーンで磨く
一度磨いた後の様子

!? あっという間に作業も終わって、一度ソールを磨いただけでも、かなり細かい傷が取れてとても綺麗に仕上がっている。

都度、設定通りにチューンナップされているか確認しながら進める

次にエッジの角出しをする。全体が1.5度の角度になるように設定し、マシンにかける。所々あったエッジのサビもどうなるのか気になるところ。

そして出てきたのが……

水蒸気がガラスについて見辛いが……。ベースエッジを研磨しているところ
そして出てきたものがこれ、錆はほぼなくなった

見違えるようにエッジが綺麗になったスキーが出てきた。「これは本当に俺の板か?」と見紛うほど別物のようだ。

そして次にストラクチャーを入れる。このストラクチャーとは、ソールに人工的に細かな溝を入れる作業のこと。これによって滑走の摩擦熱で発生した水分を流れやすくする。ストラクチャーをいれないと水分が表面張力のようにソールと雪面の間に溜まってしまい、滑走性が落ちてしまう。

ストラクチャーが綺麗に入るように事前にブラッシングをする

ストラクチャーは各スキーメーカーが社外秘のストラクチャーパターンを持っているほど滑走性能に直結する重要なもの。

このストラクチャーを設定によって、ほぼ自由自在に入れられるのがジュピターの強味。さらに今後バージョンアップされる機能が”3Dストラクチャー”。あらゆるパターンのストラクチャーが入れられるだけでなく、通常は一定の深さでしか仕上げられないものが、部位ごとに深さも調整できるようになる。

今回はせっかくなので、先の北京五輪スキークロスでも活躍した須貝龍(すがいりょう)選手がオススメするCENTER WAVEの模様にしてみた。センターに水分が流れやすい溝をつけ、エッジに近い両サイドはストラクチャーを入れないことで操作性と滑走性を兼ね備えた画期的なストラクチャーだ。

ゼブラで入れられるストラクチャーパターン。(下4つは今後搭載予定の3Dストラクチャー)

コントロールパネルでストラクチャーの設定を読み込ませ、深さを設定する。浅目、中目、深目、と選べる。今回は中目の深さに。そうして出てきたのがこちらだ。

ストラクチャーを入れている様子
曲線のような模様が今回入れたストラクチャー

写真だと少し分かりづらいが肉眼だとはっきりと模様が見える。

最後に仕上げ用のディスクでベースエッジのポリッシング仕上げを行う。
ストーン・ディスクでついた若干のベースエッジの傷を消し、鏡面に仕上げる作業だ。こちらは動画でどんな様子か見ていただきたい。

ベースエッジポリッシングディスクにかけている様子
仕上げ後のソール
なめらかなエッジになった

いままで薄く見えていた研磨した跡も完全になくなってツルツルになった。

石を踏みつけた後のような後はほぼ消えてうっすら見える程度に
レールに入って傷つきまくっていた足裏は綺麗さっぱり

実際に仕上がった板は滑走面の傷がほぼ消えて、ストラクチャーも見事に入った。ところどころ浮き出ていたエッジのサビも綺麗さっぱり消え、ポリッシングディスクにより微かな傷さえも無くなった。一部足元のレールに当たっていた部分は丸みがあるが、これ以上削るとエッジ自体がなくなってしまうので仕方ないこと。

ここまでかかった時間は診断から作業終了までおよそ1時間弱。取材しながらだったので、作業自体はもう少し早く終わるだろう。板によってはソールやエッジが傷ついていれば研磨する作業がさらに必要になるが、今回持ってきた板もシーズン中になにも気にしないで、ツリーのなかやパークに入りまくっていた板なので、傷がたくさんついている方だと思う。

今回はエッジの角出しと綺麗にソールを研磨してストラクチャーを入れる12700円のプランだったが、お気に入りの板がまた生まれ変わって手元に戻ってきたのだから、個人的には大満足している。
ひとまず、ストラクチャーもばっちり入ったこの板で今季滑るのがさらに楽しみになった。

ジュピターXはクレブ店舗内からガラス越しに見学も可能だ。興味があれば、この冬湯沢町へ滑りに訪れた際にクレブ店舗内にあるゼブラチューンナップファクトリーへ足を運んでみてほしい。

またジュピターの動作を映像で確認したい方は、メーカーのYouTubeからどうぞ

クレブスポーツ
〒949-6102
新潟県南魚沼郡湯沢町神立39−8
025-788-1788

取材・執筆 = 小野塚大悟

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