日本雪崩ネットワーク(JAN)が雪崩情報と登山届を連動させたサポートサービスを運用中!

雪崩情報や調査、雪崩安全対策の教育などを通じて冬山での安全啓蒙活動を行うNPO法人日本雪崩ネットワーク(JAN:Japan Avalanche Network)は、雪崩安全対策の向上を狙いに2022年12月「山と自然ネットワーク コンパス」との提携を発表。それによって日本雪崩ネットワークが発表する雪崩情報が、コンパスで登山届を提出したユーザーに届くシステムを整え、運用を始めている。まだ知らないユーザーのために、どのようなものか概要を紹介しよう。

INDEX

日本雪崩ネットワーク(JAN)とは?

日本雪崩ネットワーク(JAN:Japan Avalanche Network)は、冬季アウトドア活動の雪崩安全に関する雪崩教育・雪崩情報・事故調査・リソースの提供を4つの柱に活動する非営利の専門団体。会員となっているのは山岳ガイドやスキーパトロール、救助隊員など雪山を現場とするプロフェッショナルや雪崩研究者、あるいは訓練を受けた一般の山岳家など、幅広い人材で組織構成されている。

日本雪崩ネットワークの公式サイトのトップページを見ると「バックカントリーの雪崩対策・7つのステップ」や、リアルタイムの各地の雪崩情報が発信されている。また、一般ユーザーからプロフェッショナルまでを対象に雪崩安全対策のスキルを学ぶことができるセミナーを各種開催し、細やかな情報や専門知識の提供によって雪山で活動するユーザーたちへ安全啓蒙を行ってくれる専門機関なのだ。バックカントリー滑走に興味のある・熱心になっているスキーヤー・スノーボーダーにとっては、なんともありがたく頼もしい存在である。

<出典:日本雪崩ネットワーク公式サイト> https://nadare.jp/

雪山での安全を守る「社会インフラ」としての雪崩情報

スキー場と異なり、人の手によって安全管理されていない自然の雪山では、いつ何時どこにリスクが潜んでいるかわからない。バックカントリーで滑る場合、起こりうる危険(リスク)は、天候による危険、地理的条件による危険、ケガや病気、道具のトラブルなどが考えられる。なかでも雪崩のリスクへの注意が一番重要だろう。もし雪崩に遭遇してしまうと窒息や、雪崩に流されながら木や岩などに衝突して命を落とす可能性が高いからだ。

また、自分が発生させた雪崩で人に被害を及ぼす可能性もある。雪崩事故の多くが人為的な判断ミスで発生している。雪が不安定な状態にもかかわらず、それに気づかず斜面に入る、あるいは人的な要因によって危険な状態を軽視してしまうなどがある。さらに、週末のみ山に訪れる一般ユーザーには、積雪コンディションの全体状況を的確に捉えるのは難しいという面もある。

そこで日本雪崩ネットワークでは、雪山に入る人をサポートする「社会インフラ」としてリアルタイムの雪崩情報を発信、雪崩情報は発表するだけでなく、それを適切に理解した上で利用することが重要なため、雪崩安全セミナー「アバランチナイト」や雪上講習会「セイフティキャンプ」など、一般ユーザーを対象とした教育プログラムを通して、雪崩情報の理解の促進と、効果的かつ適切な活用をサポートしているのだ。このような包括的な雪崩安全対策を実施しているのは日本国内では日本雪崩ネットワークのみで、その存在感と社会的貢献度はとても大きなものだ。


日本雪崩ネットワークの雪崩情報

日本雪崩ネットワークの雪崩情報は、欧米の公的機関あるいは非営利組織(19カ国33機関)で発表されているものと同じ標準化された雪崩情報だ。雪山で行動する人に対し、現在、雪崩の危険度がどの程度あり、どのような種類の雪崩に気をつけて行動すべきなのかについて、具体的な内容を伝えることで、フィールドでの行動判断をサポートすることを目的として発信されている。

▼日本雪崩ネットワーク(JAN)のTwitterで提供されている雪崩情報

国際標準の雪崩危険度区分を使用

その日に警戒したい「雪崩の種類」が、どの標高帯と方位にあるのか、そして、その雪崩の「誘発の可能性」と、発生した場合の「規模」をグラフィカルなイラストで表現。これにより、行動者はフィールドで、どのような「地形選択」がより良いのかを理解することができる。


オンラインで登山計画を作成・登山届として提出できるシステム「コンパス」との提携

バックカントリーに入るには登山計画書を指定された場所に提出する必要がある。登山計画書では、入山ルートや行動予定、グループメンバーの連絡先や装備を知らせておく必要があるのだ。この登山計画書をオンラインで作成でき、それを登山届として提出できるシステムが「コンパス」だ。

その利便性から個人ユースから行政や山岳組織においても広く利用されていることもあり、日本雪崩ネットワークは「山と自然ネットワーク コンパス」との提携により、雪崩安全対策の向上を狙いに2022年12月よりユーザーへのサポートサービスを開始した。

日本雪崩ネットワーク×コンパスの協働の仕組みはこうだ。


「コンパス」マップでルート設定した登⼭計画を作成し、そのルートが日本雪崩ネットワークが発表する雪崩情報の区域内に⼊っていれば、毎朝、雪崩情報が更新された際、登山日に提出者へ通知が届く、というシステム。当日の午前5~7時頃に登録アドレスへ、その日の雪崩・雪質情報のメールが送られるため、リスク回避の行動指針として活用できる。

日本雪崩ネットワークの雪崩情報の発表は、以下の山域と日程を予定している。いずれもバックカントリー滑走には人気の高いフィールドだ。これらの山に出かけるユーザーは、ぜひ有効に活用してはどうだろう。

発表区域予定期間
白馬(長野県)12月24日~4月初旬(毎日)
妙高(新潟県)12月末頃~3月下旬(毎日)
神楽ヶ峰・谷川岳・武尊山(新潟県・群馬県)12月末頃~3月下旬(毎日)
ニセコ・羊蹄山・余市岳・尻別岳(北海道)12月13日~3月下旬(火・木・土)

JAN理事・出川あずさ さんより

最後に、日本雪崩ネットワークの創立者でもあり、JAN理事の出川あずささんからいただいたコメントをお伝えしよう。

雪崩情報は、より良い地形選択の手助けのために出しています。危険度は発表時のものですから、現場で皆さん自らの判断も、とても大切です。コンディションがよくわからない、あるいはちょっと不安定性を感じたら、斜度を落としてください。今、どのような種類の雪崩があるにせよ、斜度を落とすことが最も効果のある安全対策です。                      —JAN理事 出川あずさ

降雪もこれからますます増え、荒れた天候になることも多いハイシーズン、安全のために自身ができるアクションは実践し、細心の注意と十分な情報収集をして雪山へ出かけてほしい。


NPO法人日本雪崩ネットワーク(JAN)
公式サイト:https://nadare.jp/
公式SNS:TwitterFacebook

INDEX