もう見た?星野洸我「DECEMBER」。その舞台裏

シーズン序盤の12月。1ヶ月間に渡ってカナダBC州のレベルストークでソロ映像プロジェクトを進めていた星野洸我とシネマトグラファーSHIZO MOV.。その記録「DECEMBER」が公開されて約10日。もう、チェックしましたか? 

この映像の舞台裏などを改めて星野洸我に伺いました。映像とあわせてお楽しみください。

ーーなぜレベルストークだったのですか?

「シーズンのはじめに日本にはないスケールで、まとまって雪が降る場所として思い浮かんだのがレベルストークだったんです。19歳の時、ウィスラーに籠もっていた時は名前も知りませんでした。ちゃんとレベルストークを知ったのは佐々木悠さんの存在も大きいです。彼のYouTubeを見て、『ここは最高だな』って思ったんです。

あとは地元のスノーボーダー仲間、佐藤亜耶ちゃんや久保田空也くん、星宏樹くんから『シーズン初めから、あのコンディションは最高だよ』と話を聞いて、それなら行ってみたいな、と。 はじめはFWQ FINAL(現名称:FWT CHALLENGER)のトレーニングにと考えてましたが、昨年の夏頃に映像を撮っているジゾーさんにレベルストークへ行くことを話したら、乗り気になったので一緒に行くことにしました」

映像冒頭に出てくる通称Zクリフの一コマ

ーー12月の一ヶ月間と期間を限定したのはどうして?

「1月は南魚沼の山がピークを迎えるから、撮影でガッツリ動きたいんですよね。ジゾーさんも撮りたい人がいっぱいいるだろうし。2月以降は大会や撮影アテンドなどやることが増えるから、12月の一ヶ月間がちょうど良かったんです」

ーーレベルストークを滑った印象は?

「撮影に向いている山かと言われるとそうじゃなかったですね。撮影をするにしても、競争率は高いし。でも、コースの距離感、スケールの大きな地形など、滑り込む山としては最高です。ホームゲレンデの石打に戻ってきたとき、感覚がバグっちゃって、普段滑っている斜面が緩く感じました。『スイッチは目をつむっても滑れちゃうよ』って感じです」

時間のあるゴンドラ内でイメージトレーニングをする星野洸我

日当たり悪いため撮影スポットから外したノースエリアだが、何かできることがないか探索を重ねたという

頑張って滑ったときにはご褒美ドーナッツを

美しい夕陽が印象的だったレベルストーク

ーー映像のことを教えて下さい。あらかじめイメージをもって現地に行ったんですか?

「日本にいる間にジゾーさんとはかなり打ち合わせました。使う曲の目星をつけて、映像の長さも決めて、そのために必要な絵コンテを作り、撮るカットもまとまっていました。 例えば、オープニングは飛行機の窓枠カットから始まろうって感じ。12月3日からレベルストークに入ってからも段取り良く進んで、空中へ飛び出すシーンの撮影など、当初考えていた素材リストを一つひとつ潰していったんですよ。

でも、想定外にレベルストークは降雪がなかったんです。12月3日から24日まで、まとまった降雪が1回しかなくて、そのうえ20日頃からはマイナス30℃近くに気温が下がり、リフトがクローズ。山にも上がれませんでした。最初に思い描いていた画作りは難しいってなったんですけど、クリスマスからようやく雪が降って、残りの1週間でなんとか埋め合わせた感じです」

前日の爆風で雪がなくなった斜面。このときの気温は-30℃、

Zクリフはさまざまな角度からロケハンを重ねた

ーーよく完成にこぎつけましたね。

「正直なところ、思っていたテイストからしたら2割程度しか撮れていません。ライディング映像のほとんどは24日からの1週間で集めたカットです。でも、クリスマス前までにくまなくスキー場を滑り込み、見回って、めぼしいスポットを押さえていたからできたんです。雪が降ったので1日3、4カットはしっかり撮れました。
最終日はスキー場が終わって暗くなる18時まで粘りました。形にすることにはこだわりましたね。なので、最初のカットに出てくるクリフ、僕らは”Zクリフ”って呼んでいたんですけど、あれに挑戦しただけで終わってしまったのが悔しいです」

ーーこのあとの予定を教えて下さい。

「いまはアメリカからFACTIONチームが湯沢水上エリアに来ているので、彼らと一緒に20日まで撮影で動いています。その後は自分の映像プロジェクトでストリートシューティング。2月末からFWQ FINAL(現名称:FWT CHALLENGER)でヨーロッパっていう感じですかね。ヨーロッパに行ったら、キャンディッドが好きなので、彼のホームゲレンデのラ・クルーザを滑ってみたいとは思っています」

ーーありがとうございます。このあとのシーズンもケガのないよう楽しんでください。

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あとがき

普段なら12月から豊富な積雪によってシーズン頭からパウダーコンディションが整うレベルストーク。なぜだか、今年は降雪がほとんどなく、フレッシュな雪の状況を狙うならバックカントリーエリアへ足を運ばないとならない状況だったという。

現地に住む佐々木悠も「12月のレベルストークでこんなに雪が降らなかったのは初めてかもしれない」と言うほどだけに、行ったタイミングが悪かったとしかない。それでも、その時できる状況で撮影を行い、星野洸我らしいスピード感溢れるライディングが海外のスケールのなか十分に表現されていた。それが、結果的にはFACTIONのヘッドオフィスに届き、Instagramで公式にポストされ、世界中の滑り手の目に触れることとなった。

星野洸我は現在FACTION TEAMと日本シューティングの真っ只中。こちらもどんなフッテージを残すのか、どうなのか。楽しみだ。

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