東急不動産株式会社 ~地域のインフラとしてのコミットメント|POW「サステナブル・リゾート・アライアンス」加盟スキー場事例❺

POWが発起した「サステナブル・リゾート・アライアンス」に加盟し、気候変動やサステナビリティへの取り組みを熱心に進めているスキー場を紹介するシリーズ企画。今回はニセコ東急 グラン・ヒラフやハンターマウンテン塩原など7つのスキー場を持つ東急不動産株式会社をピックアップ。日本のリーディングカンパニーだからこそのアクションやビジョンとは?


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「暮らしに欠かせない」を提供する東急不動産

東急不動産といえば、住宅や商業施設など人々の暮らしに欠かせないさまざまなサービスやインフラを展開する日本を代表する企業の一つだ。その事業内容や規模は都市開発から不動産流通など、想像しきれないほど多彩で巨大だが、北海道のニセコ東急 グラン・ヒラフや栃木県のハンターマウンテン塩原はじめ7スキー場(富士見パノラマリゾートは提携スキー場)が、東急不動産ホールディングスグループが擁する東急スノーリゾートだ。

東急スノーリゾートは、どのようなサステナブルの取り組みをしているのか、そして人々の暮らしを支えるリーディングカンパニーとして、持続可能な社会を目指すなかで、地域にどのように関わっているのか。不動産部門やスキー場運営に携わる3人の方に話を聴いた。

現場が感じている危機意識

ニセコ東急グラン・ヒラフから望む羊蹄山と眼下にはニセコの街並み

いま、現場で気候変動への危機感を体感するのはどのようなことだろう。

「とくに今年は非常に暖冬で小雪で、2月上旬時点で例年の60%しか積雪がないんです。年々オープンの日が遅くなり、クローズの日は早くなっていて、昨年はハンターマウンテン塩原が全面滑走できたのが過去10年間で最も遅くて1月7日、今年はさらに1月27日になりました。やはり全面滑走できる日が短くなっているのを感じます。そうなるとエントリー層が動いてくれないので、スキーマーケット自体が縮小していってしまうという危機感があります。

スキー場を前提に生計を立てている周辺の宿泊施設や飲食店、お土産屋などは経営難に陥ってしまう。さらにスキー場のあるエリアは山間部なので林業が盛んですが、林業に従事している人は冬はスキー場で働いている人も多い。営業日が減ると働き口がなくなるという雇用の問題も深刻になります。よって地域全体へも大きな影響があると考えています」。(東急リゾーツ&ステイ 山崎さん)

すべてを100%再生可能エネルギーへ切り替えが実現

そのような現状のなか、東急不動産は2022年12月、スキー場だけでなくグループが保有するビルや商業施設のすべてを100%再生可能エネルギーへ切り替えた。その経緯や背景はどのようなものだろう。

「東急不動産ホールディングスとしては1998年くらいからさまざまな環境的な取り組みは進めてきましたが、2022年に策定した全社方針において、①脱炭素 ②循環型社会 ③生物多様性 という大きな3つの環境経営方針を掲げたことで、より推進していくべきタイミングと合わせて100%の切り替えを完了したのです。

弊社は、大規模な施設を運営する電力を消費する側としてだけでなく、一方で再生可能エネルギーを作る事業「ReENE(リエネ)」を2014年にスタートしていました。現在、1,762MW(2024年1月末時点・一般家庭約81.6万世帯分に相当)の電力を発電していますが、その強みを生かして切り替えをしていこうというのが経営的な背景でした」。(東急不動産 望月さん)

望月さんのお話の「再エネ化100%」を「ふ~ん」と聞き流してしまっては大間違いだ。使用電力のすべてが自然由来のエネルギーで賄われるということが、どれだけすごいコトか、ぜひ想像力を働かせてほしい。

太陽光発電所
風力発電所

ReENEは太陽光発電、風力発電などを活用し電気を作っているが、訪れたスキー場で乗るリフトやゲレンデの照明、猛吹雪のときには逃げ込んだレストハウスの暖がどれだけありがたいか。

そのヒーターも、すべてが太陽の光や風、土の中の微生物から生まれたエネルギーで動いていると考えたら……雪山を愛するスキーヤーなら、きっと心がほっこりして、自然に感謝したくなるだろう。そして、そんな環境に優しいスキー場で過ごす時間は、炭素ガスを出し続けているスキー場よりも、はるかに心地良いに違いない。

ニセコ東急 グラン・ヒラフのナイターは国内最大スケールを誇る

東急不動産ホールディングスでは、自社発電で作った再生可能エネルギーを電力会社を経由して7つのスキー場を含む自社施設に使用。年間約15.6万トン(一般家庭 約8万軒分)のCO2削減効果が生まれるという。こんなとてつもないスケールの脱炭素への取り組みを可能にしているのは、やはり人々の豊かな暮らしと未来へコミットしているリーディングカンパニーであるがこそ、と言えそうだ。

リゾート現場での取り組み

電力の再エネ化の他にもどのような取り組みを進めているのだろう。東急リゾーツ&ステイの小松さんが教えてくれた。

「東急スノーリゾートは地域とのつながりが非常に強いので、地域と一緒に自然環境への負担を減らすための事業や、地域に暮らす人々に向けての取り組みにはとりわけ自信を持っています。いつまでも雪が楽しめる豊かな山を次世代につないでいくために、地域と力を合わせたトライがいろいろあります。具体的には大きく2軸あり、一つが『生物多様性』、そしてもう一つが『循環型社会』です」。

生物多様性への取り組み

豊かな森を守って未来へつないでいく
キタキツネも保護せねば

ハンターマウンテン塩原などは国有林を使っているため、森林保護活動に注力。森を守って未来へつなぐ活動として植林をし、木が育つ過程も守るための間伐や薬剤の散布なども地域住民と連携しながら、スキー場を含めた地域の森林保護活動を進めている。そのなかには生態系の保全もあり、例えば、ニセコに棲む野生のキツネにつく有害な寄生虫の駆除なども実施している。

循環型社会への取り組み

雪は楽しい! 子どもたちは大喜び
スキージャム勝山で小中学生にプレゼントされているリフト券

まず環境について知ってもらうことが大切なため、雪山にふれてもらう機会を作る。地域の小中学校にリフト券をプレゼントしてスキー場へ来てもらえるよう地元への声がけにも積極的だ。雪にふれる機会が減っているいま、子どもの頃から雪に親しむ機会を提供することで、環境への意識づけと変化への気づきを図っていこうという狙いだ。

「もりぐらし®」と「サステナビリティfor Snow」

東急リゾーツ&ステイでは、自然をもっと未来につなげる動きを推進していくために「もりぐらし®」と銘打って、様々な保護活動を展開している。とくにスキー場に関しては「サステナビリティfor Snow」として、もりぐらしの中の特にスキー場にフォーカスして、観光と地域での体験を軸にしながら、いろいろな環境への取り組みをしている。

◆「もりぐらし®」公式サイト https://morigurashi.com/ 


◆「サステナビリティfor Snow」公式サイト https://www.tokyu-snow-resort.com/sustainability/

「脱炭素だけ、ではないんです。地域とつながっていくためや、スノー人口を増やしていく取り組みになることも含め、気軽にできることを企画しています。例えばタングラムでやっている農家とのコラボ。ホテルで出る残飯をコンポストで堆肥化し、農家のとうもろこし栽培に使い、できたとうもろこしの収穫体験をする、などです。

タングラムで行っている農家とのコラボは家族が大喜び!

次世代にスキー場をつないでいくことが環境への取り組みの目的の一つでもあるんです。子どもたちに雪にふれてもらい、雪の楽しさを体験してもらうことから入って、ゆくゆくは自然に環境に興味を持っていってもらえたらいいし、スキーやスノーボードを楽しむユーザーに育ってくれたら、なおよいですね」。(東急不動産 望月さん)

サステナブル・リゾート・アライアンス(SRA)へ加盟した理由は? 

東急スノーリゾートがPOWのサステナブルリゾートアライアンス(SRA)に加入したのは、どのような背景からだろう。望月さんによると……。

「今回のアライアンスへの加盟や、サステナブルの取り組みを推進していることを対外的に発表することは、外向きもそうですが、実はインナー(社内)への意識づけが大きいのです。

再生可能エネルギー100%切り替えを2022年に完了しても、社内には認識が行き渡らず、せっかく頑張ってやっていることを知らない社員もいたんです。社内での浸透に課題認識を持ち、どうしていこうかと思っていたところ、2023年の夏にPOWさんと出会いました。POWと組んで対外的にコミットして発信していくことで社内にもしっかり伝わると考えたのです。

その後、ニセコひらふでPOWとイベントをやったのですが、参加者に「そんなことやってたの? すごいじゃん!」と言われた。ああ、これはダメだな、と思って、POWの発信力を借りようと思ったわけです」。

ニセコひらふでのPOWとのコラボイベント

POWとのパートナーシップはスタッフやユーザーにどう伝わっているのか。リゾートで日々、ゲストに接している山崎さんはこう振り返った。

「スタッフは誇りを持つことができたと思います。ゴンドラのなかに貼ってある再エネ100%のステッカーを見て、わざわざカウンターに来て『すごいことしているね』と言ってくださるお客様がいたり。POWのことを知っているお客様はとても多いんです。『POWと組んだんだね、いいね』というメッセージもたくさんいただきます。

今後ももっと取り組みを進めてくれるだろうという、お客様からの期待感も感じます。そういった意識の高いお客様をもっと増やしていく必要があると思いますが、その方法としては、あまり構え過ぎずに肩の力を抜いて、“できることをやっていこうよ”くらいの感覚がいいのかなと思っています。

サステナブル・リゾート・アライアンスに関しては、気候変動や脱炭素はスキー業界全体の全体として大きなムーブメントを興していくことが必要で、それにはスキー場だけでなくメーカーや物販、雪山を生業としている全体として注視し取り組む必要があると思うので、アライアンスにはそんな動きを推進してくれることを期待しています」。

人々の暮らしや幸せへの役割

人の生活に直結した事業を展開する企業として、人々の暮らしや幸せ、そして地域の持続可能性に対してどのような役割があると考えているのだろうか。
東急不動産として全体を俯瞰する望月さんはこう話す。

「スキー場は地域の基幹産業で、社会インフラだと思っています。もしもスキー場が運営しなくなったら、地域の経済に与える影響は甚大です。その逆のオーバーツーリズムが起きている場所、例えばニセコでは、ゴミ問題や駐車場不足など、地域の社会課題を生んでいます。それらを意識しながらアクションをするべきだと思っています。

ニセコ東急 グラン・ヒラフのマウンテンバイクコース
サマーゴンドラも重要な夏のコンテンツ

スキー場の課題として現在、一番大きなところはグリーンシーズンの取り組みです。ちなみにニセコ東急 グラン・ヒラフでは、マウンテンバイクコースのコンテンツ化、ゴンドラの架け替えも計画中です。もう少し上位的なところではニセコ周辺の地域の住宅不足、交通渋滞や物価高もあります。冬場は人口が倍にも膨れ上がる倶知安町では住宅が十分に供給できていないのが実情です。東急不動産ならではの専門性を活かしつつ、行政と連携しながら、循環交通も含めて定住人口、生産人口を増やすための動きをいろいろと仕掛けています」。

大事なのはQOL(Quality of Life)、住んでいていかに幸せに暮らしているか。

「東急不動産として、スキー場経営は単なるビジネスではなく、地域の皆さんと一緒に地域課題をいかに解決していくかを重要視しています。それは企業のDNAのようなものなんですね。
行政や観光協会、DMOと地域住民をつなぎながら、民間企業だからこそできることを実現する。そして、人々の豊かな暮らしを支える企業だからこそすべきことに、いま、鋭意取り組んでいますし、これからも地域の皆さんと力を合わせて推し進めていきます」。

社会インフラとして地域を支え、発展させていく可能性にあふれるスキー場。企業の営利追求など遥かに超えた先に見ているのは、その土地に暮らす人々の幸せだ。

教えてくれた人

PROFILE

望月 巧実(もちづき たくみ)さん
東急不動産株式会社
ウェルネス事業ユニット
ホテル・リゾート開発企画本部
ホテル・リゾート第二部 開発企画グループ
グループリーダー課長
2005年東急不動産入社、ゴルフ場・スキー場のM&Aや事業再編、ホテル開発など

PROFILE

山崎 真也(やまざき しんや)さん
東急リゾーツ&ステイ株式会社
スキー運営統括部 運営管理部 
マネージャー
2010年東急リゾーツ&ステイ入社、スキー場の運営管理

PROFILE

小松 悠(こまつ ゆう)さん
東急リゾーツ&ステイ株式会社
スキー運営統括部 運営管理部
経営企画統括部 広報部
2019年東急リゾーツ&ステイ入社、スキー場の運営管理

Information  東急不動産株式会社
◆公式サイト:https://www.tokyu-land.co.jp/
◆公式SNS:InstagramFacebook

取材協力/東急不動産株式会社東急リゾーツ&ステイ株式会社POW JAPAN

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ホームゲレンデやお気に入りの、思い出の詰まった大好きなスキー場でこの先も滑り続けたい。
あなたにとって特別なスキー場が”脱炭素化・サステナブル化”に取り組み、グリーンなスキー場になることを応援しよう!

POW JAPANは、本キャンペーンで皆さんが回答してくださった「応援したいスキー場」へ「SUSTAINABLE RESORT ALLIANCE」への加盟と脱炭素化・サステナブル化に向けたサポートを提案いたします。

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Information  POW JAPAN
◆公式サイト:https://protectourwinters.jp/
◆公式SNS:InstagramFacebookYouTube

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