世界に衝撃が走った4月24日
ワールドカップ総合優勝8回、世界選手権優勝7回、オリンピック金メダル2回獲得という、奇跡的な記録を打ち建てた世界最強のアルペンレーサー、Marcel Hirscher(マルセル・ヒルシャー)。数々の伝説を残しながら2019年9月FISのレースシーンを去ったが、この度なんと5年ぶりに現役復帰を発表。
「マルセル・ヒルシャー現役復帰!」が発表されたのは、4月24日。マルセルの母国オーストリアで最も広く読まれている新聞「Kronen Zeitung」をはじめ、ヨーロッパの各メディアでトップニュースとして取り上げられ、瞬く間にその話題は世界中を駆け巡った。
上のYou tube動画は、オーストリア・ウィーンを中心に発信されているメディアによる1分弱の映像だが、ドイツ語なので詳しい理解は難しいが、映像を見ているだけでもマルセル・ヒルシャーの輝かしいキャリアと、スーパーヒーローとしての存在感が伝わり、今回の現役復帰がどれほど大きなインパクトがあるのか伝わってくる。
Webメディアによる4月24日に投稿されたニュース記事の解説を一部紹介すると…
「ここ数時間の「Kronen Zeitung」やオーストリアのすべてのメディアからの情報は、言うまでもなく驚くべきものでした。8度のワールドカップ優勝者が(もちろん彼のブランドであるVan Deerと共に)レース舞台に戻る準備をしています。
35歳になるオーストリア・ザルツブルクのスターは、2025年のドイツ・サールバッハでのワールドカップを目指して再び競技に戻る意向を示しています。それも、母親の出身国であるオランダへ移籍して、オランダのアスリートとして。なぜならマルセルは以前のオーストリアのチームメイトたちの栄光の夢やスポットを奪いたくないと考えているからです。別のスポーツパスポートで復帰するために、所属する連盟からの許可を得る必要があります。ORFテレビによると、Ski Austriaは今日中にその意向を表明する予定です。これは爆発的なニュースになることでしょう。
それでは本人がInstagramで発信したメッセージを!
【翻訳】
こんにちは、マルセルだよ。私も何か言わなきゃいけないと思っていたんだ。たくさんのことがメディアでも報告されてきたけど、そう、スキーレースにまた取り組むことになり、それができることがとても嬉しいよ。なぜまたやるのか? それは私にとってはかなり明確で、スキーをする喜びが私を導いてくれるからなんだ。この5年間レースシーンから離れていたけど、ずっと自分の居た大好きな場所に戻って、ただ楽しむだけ。それがまたできることが本当にとても嬉しくて、今後のことを考えると本当に楽しみなんだ。
そして、オーストリアスキー協会やオランダの方々との相談はとても良いものだったよ。私たちは皆、オランダのスキー協会にとってこのプロジェクトを実現することは良いことで、決して難しいことじゃないと考えているんだ。そして、私にとってとても重要なことは、オーストリアの若手選手たちから貴重なリソース(資源)を奪わないことなんだ。彼らの栄光への夢やポジションを大事にしたい。未来は若い人たちのものだからね。35歳の私にとって、この決断はとても明確で、若手育成とオーストリアのスキースポーツの未来のために必要だと考えている。
そして、オランダのスキー協会にとって多くのことができると信じているしね。二重国籍のおかげで、このプロジェクトが可能なこともありがたいよ。だから、これからのことをとても楽しみにしているし、特に2年前に「VAN DEER-Red Bull Sports」を始めてから、W-CUPでヘンリク・クリストファーセン※1(Henrik Kristoffersen) がスーパーウィナーとして大成功し、昨年はティム・ヘルマン・ハウゲン※2(Timm Hermann Haug)が素晴らしいシーズンを送ったのを思い出すと、彼らとFISレースに再び参加できることが本当に嬉しい。そして、この素晴らしい機会を活かして、ルーカス・ブラッテン※3(Lucas Braathen)と一緒にトレーニングすることもできるかもしれない。自分の情熱を追求するために、自分のベストを引き出すためにもそれはとてもクールで素晴らしい機会だと思うんだ。
私はこれまで247回のレースに出場してきたけれど、これからも母国のために、そして自分の情熱のために静かに熱くやっていくと思う。応援してくれる皆との美しい共有の瞬間を楽しみにしているよ。それでは、素敵な夏を過ごして。冬までまたね! チャオ!
Marcel Hirscher
※1 ヘンリク・クリストファーセン(Henrik Kristoffersen)……ノルウェー出身のスラローマーで、W-Cupや世界選手権で数々のメダルを獲得。2022年6月にヒルシャーの「VAN DEER-Red Bull Sports」と契約、’22-23シーズンはSL/GSで11回も表彰台に上っている。
※2 ティム・ヘルマン・ハウゲン(Timm Hermann Haug)……ドイツ出身のレーサーで、高速系・テクニカル系いずれもFISレースに参戦している。
※3 ルーカス・ブラッテン(Lucas Braathen)……ノルウェー出身の若手レーサーで、2019年からW-Cupに参戦。’20/2021シーズンからGSで優勝はじめ頻繁に表彰台に上がる。そのテクニックや競技力は世界が注目する最先端レーサーとも。
STEEPでも「VAN DEER-Red Bull Sports」スキーでホットな話題だったヒルシャー!
STEEPでは、マルセル・ヒルシャーが、その手で開発したスキー「VAN DEER-Red Bull Sports」が2024年3月に日本に初上陸したことで、ちょうど話題になっていたタイミング。新潟県湯沢町のプロショップ「クレブスポーツ」が正規国内販売を手掛けることが決まったニュースや、日本初お披露目となったユーザー試乗会の様子をお伝えしてきた。このスキーとともに、今後、日本でもマルセル・フィルシャーの動きには大いに注目が集まるだろう。