テーマは板まるごと「日本」。国内発祥のガレージブランドWAPAN SKISが作り出すスキー

登場以来、ひときわ目をひくグラフィックが注目を集めるブランドがある。’18季に国内で発足したガレージブランドWAPAN SKIS(ワパンスキー)だ。WAPANとはJAPANの綴りに和の意味を込めて「WA」を付け加えた造語だ。日本人にも外国人にも聞き馴染みがあって覚えやすい。
言葉から連想されるように、WAPANは日本人の手によって、日本の良さを詰め込んだ板を作る、というコンセプトのもと生み出されている。

スペックも国内で滑ることを想定して作られている。
海外のように大きな斜面を滑ることを目的とせず、日本の山岳地系や天候に合わせて、ツリーランや腰までのパウダーでの滑走に適した板作り。

”フリースキーは頑丈でなくてはならない”という命題のもと、耐久性が高いのも特徴。パイン材とポプラ材のミックスコアを採用し粘り強いフレックスを持ちながら、強度の高い桐材をトップからテールまで組み込むことによって高い耐久性を実現。
ソールは耐衝撃性に優れたP-TEXという素材を高密度で加工して作られているため強固な仕上がりに。エッジはモデルによって、2.2mm~2.5mmというぶ厚さを使い分け、ボックスやレールでの使用に耐えうるよう製造されている。

それらを基盤に作られるスキーは4種類。パウダーを滑るために開発された幅122mmの「イ」。フリーライドシーンで活躍する幅105mmの「ロ」。パークでの滑走に最適な幅90mm「ハ」。そして今季新たに、ハをベースに改良したオールラウンドに使いやすい幅100mmの「ホ」が登場した。板のモデル名までイロハ詩を用いるなど、日本人には覚えやすいユニークな名前だ。

I(イ)
11万1100円
148-122-135
L=180,190
R=19m,20m
大雪が降った日に乗りたいファットスキー。ノーズとテールになだらかなロッカーをもち、パウダーでの浮力を発揮する。足元のキャンバーによって、ゲレンデも問題なく滑れる。パウダーでのサーフライドを想定しながら、適度なフレックスとトーションを持ち合わせてオンピステでのハイスピードにも耐えうる性能を持った板
RO(ロ)
10万7800円
134-105-124(171)
136-105-126(181,191)
L=171,181,191
R=18m(171),19m(181),20m(191)
軽快なオールラウンドモデル。足元はすこし柔らかめ、ノーズとテールは硬めのフレックスを持ち合わせる。ノーズとテールがロッカーなので小回りが利いて扱いやすいのが特徴。軽量なのでツアーなどにも適している。ラディウスが小さいので、初級者から上級者まで幅広い層が壁の当て込みやグラトリなどで、遊びやすい一台。
HA(ハ)
10万4500円
113-90-113(161)
115-90-115(171)
L=161,171
R=18m(161),19m(171)
ゲレンデ、パークなどが滑りやすいフリースタイルスキー。フラットに近いキャンバーを持っている。全体的に粘り強いフレックスなので、ジャンプのランディング時やハイスピード時でも安定した滑走が可能。2.5mm幅という分厚いエッジはレールやボックスなども激しく攻めれる。
細いサイドカーブはカービングもこぶや荒れた不整地も問題なし。
HO(ホ)
10万7800円
125-100-125
L=171
R=18.5m
国内のフリースキーヤーから人気が高い「ハ」をベースに改良されたオールラウンドモデル。粘り強いフレックスをそのままに、太くすることでさらにランディング時での安定感を増している。初級者にも扱いやすい一台となった。また、板をスライドする滑り方も可能になり、壁などでの地形遊びも楽しめる。
板のソールにはブランドのキャッチコピーが書かれている

それほど日本にこだわりながら板の製造はアメリカ・コロラドにあるスキースノーボード製造メーカー、「ネバーサマーインダストリー」が手掛けている。その理由は”フリースキー発祥の地で作るため”だ。

同工場は長年にわたり熟練の職人がハンドクラフトで一本一本板を仕上げている。自らスノーボードブランドも手掛けており、耐久性や軽量性に優れた板づくりによって信頼を築いている。頑丈な板を作るためにネバーサマーインダストリーで製造を行っているのだ。

「前提としてWAPANの板は初級者でも乗りやすいように作られているのが特徴です! 僕自身がゲレンデスキーヤーに毛が生えたくらいのレベルなので、僕が扱いやすい、と思う板を作っています。多くの人にスキーの楽しみを知ってもらいたいと思っているので、意図的に扱いやすくしているんです。なので正直、上級者にはちょっと物足りなく感じるかもしれません。しかし実際WAPANの板を履いて、『できないトリックができるようになった』とか『うまくなったような気がする』という声を非常に多くいただきます」

と勢いよく語るのはWAPANのプロデュースからマネジメントまでを手掛けるのは東京在住の小野智大だ。ブランドの立ち上げから海外の工場とのやりとり、全国の展示会周りや試乗会周りまでたった一人で行っている。

WAPANにはパークやフリーライドを中心とした個性的なライダーが揃う。写真のスキーヤーは北海道で活動する山本浩司。P/Fukui Ayumi

人気を高めている理由は板の乗り味だけでなく、インパクトの大きいグラフィックにもある。日本の良さを表現するためには、スペックだけでなくグラフィックも重要な要素のひとつだ。

今季グラフィックを手掛けたのは国内のクリエイティブチーム「nonsense.」(ナンセンス)。アルペンスキーをルーツにもつ若干25歳という年齢の二人組によるユニットで、アパレルの制作を中心に活動している。若い感性を元に生み出されるアパレルはスキーヤーのみならず、若者を中心としたスキーをやらない人々にまで人気を得ている。

その活動に注目していた小野は制作を依頼。そうして生まれたのがグラフィックは「DARUMA」「TSUBAKI」「BYAKKO」の三つだ。
WAPANの板は流通量は決して多くはないながらも、初回注文なら3種類のグラフィックのなかから好きな画が選べる。

冷たい雪、厳しい冬の中に生命力の鮮やかさを表現した寒椿がモチーフの「TUBAKI」(左)
七転び八起き、何度転んでも起き上がって滑り出すフリースキーヤーをイメージした「DARUMA」(中)
菊と白虎をあしらって静と動の儚さと荒々しさを表現した「BYAKKO」(右)

グラフィック制作の経緯やnonsense.についての記事はこちら

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WAPANは決して板のスペックだけを追い求めるブランドではない。ブランドのコンセプトから企画、制作、グラフィックまで一貫したこだわりを持って板を作り上げている。WAPANにとって板を単なる道具ととらえず、機能とデザインがかみ合わさってこそのフリースキーなのだ。そうした熱い思いのもと生み出されるスキーは年を追うごとにファンを増やしている。

古来の有名な絵をモチーフにした「見返り髑髏」。見習うべき伝統は踏襲しながら、「日本のスキー界を変えてやる」というパンクな意気込みを表したブランドロゴ。



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