バックカントリーガイド愛用のバックパック|プロの選択とレビュー

バックカントリー(BC)に出るのに、必要な装備を詰め込むバックパック。安全確保のために重要な上、それを背負ったまま滑るのだから、滑りのクオリティにも大きな影響を与える。バックパック選びは、BCを安全に最大限楽しむためにもこだわりたい。そこでBCのスペシャリスト、BCガイドたちに、1Dayのツアーでどんなバックパックを愛用しているか? その優れた点を聞いてみた。次に手にするバックパック選びの参考になるポイントがたくさんだ。


黒田 誠|黒田山岳事務所

汎用性に優れていて背負いやすい

FREERIDER 30|Deuter

シンプルに見えて、様々な場面で、色々な使い方に対応できる汎用性を持ち合わせています。長い一日を終えた後にしか分からない背負いやすさという地味なスペックで秀でたモデルです。耐久性も十分あり、軽量パックにありがちな歪みで背負い心地が損なわれることも無い。Aフレームでも背負いやすいので、小柄な方や非力な方も安心して使えます。

ガイド業務の時には、よりオールラウンド性の高いFreescape Pro 40を、共同装備をシェアできるプライベート山行のときには、コンパクトなこちらを使います。女性や小柄な男性には、女性モデルのSLがオススメです。(黒田 誠)

Deuter
FREERIDER 30

容量:30ℓ
1万8700円/全4色

トップからボトムまで均一な形状を維持することで滑走時のフィット機能が充実し、軽量化も実現。バックアクセス、セーフティギアを収納する大型のフロントポケット、ゴーグルやギアストラップなどを収納しておけるトップポケットも便利。スキーのアタッチメントはAフレーム・ダイアゴナルの2wayが可能。

◆公式HP:https://www.iwatani-primus.co.jp/deuter_alpinesnow/

【Profile】
黒田 誠 Makoto Kuroda(黒田山岳ガイド事務所)
少人数制のプライベートガイドで、それぞれのレベルにあったオリジナリティあふれる山行をサポート。滑りだけでなく、旅心を大切にサービスを提供している。
http://gravityguides.net/


田中久敬|Niseko Mecca

使い勝手がとてもよく本格的なバックカントリーに対応

Niravana 30 | MAMMUT

スキー場オフピステからハイアルパインまでマルチに対応可能なバックパック。 外付けヘルメットホルダーの位置が良い、アバランチギアを入れるポケットがわかりやすく大きい、ピッケルの取り外しがワンタッチでできる、など非常に使いやすい。本格的なバックカントリーも安心。
(田中久敬)

MAMMUT
Nirvana30

容量:30ℓ
2万3100円/全3色

背面からのフルアクセス、ジャケットキャリングシステムを装備、セーフティギア収納フロントポケット、ハイドレーションシステム対応、取り外し可能なパッド入りヒップベルト、一体型ヘルメットキャリア―等、様々な機能を備える。フィット感も抜群。リサイクル素材の使用という特徴も。スキーのアタッチメントはAフレーム・ダイアゴナルの2wayが可能。

◆公式HP:https://www.mammut.jp/items/2560-00071o

【Profile】
田中久敬 Hisataka Tanaka(Niseko Mecca)
北海道の山岳はもとより海外はカナダBC州スコーミッシュにてクライミング、カナディアンロッキーにてクライミング&ハイキング、バックカントリースキー、ニュージーランド南島トランピング&クライミング&バックカントリーなどの経験も持つ。
http://www.niseko-mecca.com/


舎川朋弘 |COLOR SPORT CLUB

剛性が体への負担を軽減してくれ快適な一日が過ごせる

SHUMARI 35 & 50 | PLUS ONE WORKS 

とてもシンプルでいて頼れる多機能性です。バックカントリーに必要な装備を収納する専用ポケット、またロールタイプからなるアクセス口はヘルメットからアイゼン、そして荷が増えた時などのしまい込みにも重宝します。長い時間の背負いからくる体への負担も、このバックパックが持つ剛性感から限りなく軽減され、快適な一日を約束してくれます。

クライミングスキンからアイゼンに履き替えることを余儀なくされる場合でも、スキーをバックパックがしっかりと固定し受け止めてくれることから、その背負いから増すはずの重さも感じさせないほどのバックパックなのです。SHUMARI 50(50ℓ)も愛用しています。
(舎川 朋弘)

SHUMARI 35
PLUS ONE WORKS 

容量:35ℓ
2万5300円/ 全4色

便利なロールトップのギアラック、セーフティギアは専用コンパートメントに収納。背面アクセス、ゴーグル 2個が入るポケットあり。日本人の体型に合わせて設計されたショルダー ストラップとフレームは荷物の重量と滑走時の運動の妨げを軽減し、ウエスト ハーネスは骨盤を包み込むようなフィット感で荷物の横揺れを防いでくれる。

◆公式HP:https://www.full-marks.com/plusoneworks/

【Profile】
舎川 朋弘  Tomohiro Tonegawa(COLOR SPORT CLUB)
90年代初頭より現在に至るバックカントリシーンを築いた草分け的存在。COLOR SPORT CLUBではBCガイドの他、ロッジやカフェ、ショップも展開。白馬全域のフィールドを開拓した後もパイオニアワークは今も続いている。
http://www.colorsportclub.com/


長井 淳|JUNRINA mountain service

こんなにたくさん良いポイントがある!

RUSH SK 32 BACKPACK|ARC’TERYX

山で使っていて気に入っているポイントがいろいろあります。

1. 見た目がカッコいい!
2. バックカントリー 用バックで、バランスの取れた快適な持ち運び用に設計されている
3. 作りがシンプルかつ軽量、耐候性、耐久性、防水性が高い
4. 取り外しができるヘルメット固定システムが便利
5. ロールトップで、巻き数で数リットルの容量の余裕を作れる
6. サイドジッパーが広く、内容物を取り出しやすい
7. シリコンバンド等でギアの取り付けアレンジができる
8. 身体の大小に合わせて、背面長のサイズshort/regularを選択することができる
(長井 淳)

ARC’TERYX
RUSH SK 32 BACKPACK

容量:32ℓ
3万6300円/ 全2色

ロールトップタイプで32ℓから最大40ℓまで拡大可能。強力な生地を採用し、耐久性を高めながら軽量化を実現した新作バックパック。バックカントリーツアー向けに、持ち運びのバランス、耐候性、整理のしやすさが最適化されたバックパック。スキーはAフレームに取り付け可能。

◆公式HP:https://arcteryx.jp/

【Profile】
長井 淳  Jun  Nagai( JUNRINA mountain service )
脱サラし、立山雷鳥荘に勤務しながらガイドトレーニングを経て2010年よりJUNRINA mountain serviceとして活動。相棒のRinaと夏秋はアルプス・上信越を中心に登山ガイド、冬春はバックカントリースキーガイドとして活動中。
https://www.junrina.com/


中野豊和|インフィールド

荷物に振り回されないから滑りのクオリティが落ちない

TARGHEE FASTTRACK 35  |  GREGORY 

細身のシルエットで背負いやすく、滑走中も荷物に振り回されることがありません。ショベルやプローブなどのアバランチギアの収まりが良く、さらに取り出しやすいのもオススメしたいポイントです。
(中野 豊和)

GREGORY
TARGHEE FASTTRACK 35

容量:35ℓ
3万6300円/全3色

パックを下ろさなくてもスキー板を取り付けられるファストトラック・キャリーシステム。すばやく取り出せる雪崩対策ツール用フロントポケット。ロックがかかるスライダー付きサイドアクセス用ジッパーはフルレングス。さらに、トップ部分が分離しているので、メインパックの中身が自由に出し入れ可能。ヘルメットキャリー、ハイドレーションチューブ対応のショルダーハーネス等、機能満載。

◆公式HP:https://www.gregory.jp/item/detail/TARGHEE32_F86_1/1017

【Profile】
中野 豊和 Toyokazu Nakano(インフィールド
幼少期からボーイスカウトを通じてアウトドア活動を始め、高校卒業後は、専門学校の国立公園レンジャー養成課程へ進学。卒業後、妙高高原及びその周辺のフィールドとしての魅力を知り、移住。10年間のガイド、インストラクターの業務を経て、2006年より、インフィールドとしての活動を開始。現在、冬はバックカントリーツアーガイド、テレマークスキーインストラクター、夏は登山・トレッキングガイド、シーカヤックガイドとして活動中。
https://www.in-field.com


峯岸健|バックカントリーガイドKinTouN

とても軽量でパッキングしやすい

サ―ク35|Black Diamond

とても軽量です。それぞれのギアを分けてパッキングしやすくなっています。また、サイドジッパーのおかげで、スキーを背負っている状態でも荷物の出し入れがしやすいです。

一番の特徴は、開口部の形状です。コードを引くと本体と一体化しているフラップが雨蓋のように閉まります。開ける際もループ状になっているテープを引っ張るだけで全開するので、バックパックの中身へのアプローチがとても手早くできます。特に雪が降っているような時に特に便利さを感じますね。素早くスムーズに荷物の出し入れができるので、バックパックの中身を極力濡らさずに作業できます。(峯岸 健

Black Diamond
サ―ク 35

容量:35ℓ
2万4640円/全2色

バックカントリーに必要な機能を持たせながら、クライミングパックゆずりのすっきりとしたシルエットが特長。収納式ヘルメットフラップ、・フレキシブルなヒップベルト、ハイドレーションシステム対応。スキーアタッチメントはAフレーム・ダイアゴナルの2wayが可能。

◆公式HP:https://www.lostarrow.co.jp/store/g/gBD46214001004/

【Profile】
峯岸 健一 Kenichi Minegishi(KinTouN)
サーフィンがきっかけでバックカントリーの魅力に目覚め2013年よりバックカントリーガイド。「自然のエネルギーである波を滑るのと同じように自然の雪山でスキーがしたい、自分の足で山を登って、思うがままに滑ってみたい。リスクがあるからこそ自由を感じました。バックカントリースキーは生涯続けたいと思っています」
https://kintoun.jp/


中島 力|RIKI JAPOW GUIDE

かゆいところに手の届くデザインで容量もちょうど良い

ソールデン32|OSPREY

譲れない背面アクセスにキズ付きを防ぐゴーグルポケット、ヒップベルトにジッパーポケットとギアループ、デュアルポジションヘルメットキャリー…などなどかゆいところに手の届くデザインで、容量もちょうど良い。
(中島 力)

OSPREY
ソールデン 32

容量:32ℓ
1万9800円/全2色

十分な容量を得ながらフィット感は抜群。とくに滑りを重視するユーザーから高い評価を集める人気モデル。バランスがとてもよく、荷重を分散させることで背負った時も重さを感じない。二気室構造で背面アクセス、雨蓋付き。ウエストベルトにも小さな収納スペースがあり、行動食や小物を入れるのに便利。

◆公式HP:https://www.lostarrow.co.jp/store/c/c20/

【Profile】
中島 力 Riki Nakajima(RIKI JAPOW GUIDE)
カナダ・ウィスラーに留学中、CSIAインストラクター資格と、日本人初のCFSAフリースキーインストラクター資格を取得。数々のフリースキー大会への参加からバックカントリーへも活動の場を広げる。現在は星野リゾート トマムスキー場をベースに、ガイドやレッスンを展開している。
https://www.rikijapowguide.com


伊藤裕規|Vertical Land 

山岳スキー山行に特化した使いやすい機能をすべて備える

MATRIX 30 | MILLET 

スキーのダイアゴナル取り付け、アックス、クランポンの外部収納スペース、背中にフィットする平らなシルエットなど、山岳スキー山行に特化した使いやすい機能をすべて備えています。 

クランポンの外付けポケットとその位置。急斜面の滑走中、斜面の真ん中でスキーからクランポンに履き替えなければならなくなった時に、不安定な場所でもすぐにアクセスできて助かったことがありました。バックパックのサイド部分についていることで、滑走時にクランポンの重さでバランスが崩れることもありません。

アックスも同様にサイドに取り付けなので、滑走時のバランスが良い。
スキーを背負っている時間の長い山行時はアルパインクライミング向けのバックパックを持っていったこともありましたが、やはり重心が後ろにズレてしまって、このバックパックが恋しくなりました。

スキーの取り付け時にバックパックとスキーの接地面、そのスキーを固定するストラップがラバーで補強してあり耐久性が高い。もう4、5年使っていますが穴も開かず健在。ストラップがスキーを背負っての登攀や長時間の行動で、スキーのエッジがバックパックを傷つけてしまうことがよくあるので、この補強はバックパックを長く使う上で必須です。(伊藤裕規)

MILLET
MATRIX 30
(参考商品)

容量:30ℓ
1万9800円/全2色

滑り手の動きに安定して追従するモビリティバックシステム。左右非対称のデザインは非常に効果的で、スキーをダイアゴナルにアタッチでき、足に干渉しないようになっている。ヘルメットホルダー、アイゼンポケット、ロープホルダー、セーフティギアコンパートメントも備える。

◆公式HP:https://www.millet.jp/

【Profile】
伊藤裕規 Yuki Ito(Vertical Land)
21歳の時にカナダに渡り、本格的にスキーを始める。北米のスキー文化と地元のスキーヤーたちに影響を受けると同時に、山岳スキーに興味を持つ。ヤムナスカ登山学校を修了後帰国し、より深く山のことを学ぶために山岳会に入会。2020年1月に独立、開業。ガイドのコンセプトは ”人生に、もっと山を。
https://www.verticalland.jp/


竹尾雄宇|番亭 ~bamboo tail~

万が一雪崩に巻き込まれても埋没リスクが減る

FLOAT 32 |BCA

エアバック装備のバックパック。 万が一雪崩に遭遇しても埋没する可能性が低くなります。欧米から来るスキーヤー・スノーボーダーはエアバッグ搭載のバックパックを使っている人が多いですが、日本ではまだあまり浸透していません。雪山でのリスク回避への意識がもっと上がって、日本でももっと使う人が増えるといいと思います。そんなメッセージも込めて、ガイドとして積極的に使っています。
(竹尾雄宇)

BCA
FLOAT 32

容量:32ℓ
本体とシリンダーのセットで10万6700円

BCAのエアバッグFLOATシリーズ。圧縮空気を詰めたシリンダーを備え、その空気圧によってユニット内のタービンを駆動、周囲の空気をとり入れてバックパック上部のバルーンが開き、浮力によって深部への埋没リスクを減らす。起動は機械式トリガーのため作動感をつかみやすいのも利点。12・22・32・42ℓで展開。

◆公式HP:http://www.k2japan.com/brand/bca.html

【Profile】
竹尾雄宇 Yu TAKEO(番亭~bamboo tail~)
ガイド歴20年。30年近いスノーボードの経験を生かしたバックカントリーでのライディングの楽しさを伝えている。ビーコンチェッカーの開発やビギナー講習会など、バックカントリーの安全普及活動にも注力している。
https://bambootail.com/


佐伯岩雄|チロル

優れた点が多くスキーでもスノーボードでも使いやすい

STASH30|BCA

バックパネルからのアクセスがとても良いです。
また、バックパネル、ショルダーストラップ、ウエストベルトの内側 (体に触れる側) の素材が滑らかで、きめが細かいため、雪が付着しにくく、凍りにくい。ウエストベルトの高さの調整ができるので、体にフィットしてくれます。荷物が満載でもアバランチギアのスペースは確保されているため、クライミングスキンまで収納することができる。優れた点が多く、スキーでもスノーボードでも使いやすいです。

そして、30ℓはシーズンを通して使う人には丁度いいサイズ。グループのリーダーなど、非常用品など携帯しなくてはいけない人にお勧めです。
(佐伯岩雄)

BCA
STASH 30 

容量:30ℓ
2万4200円/全2色

ジッパーバック・パネルアクセス、アイスアックス、スキー、スノーボードを搭載できるオプション、フリース製ゴーグルポケット、除湿穴、そして一番重要な凍結防止スタッシュハイドレーションスリーブと、もう一方にはBC link装備できるスリーブも搭載。

◆公式HP:http://www.k2japan.com/brand/bca.html


【Profile】
佐伯 岩雄  Iwao Saeki(チロル)
幼い頃から登山、山スキーに親しむ。中高校と競技スキーでインターハイなどに出場。その後、競技カヌーに没頭。国体入賞を区切りに登山界に復帰。山岳スキーガイドを最も得意とする。映画「剱岳・点の記」では、山岳ガイドとして撮影を支えた。
http://www.t-tyrol.com/index.html


堀江 淳|バックカントリーグライドNiseko

BCA
STASH 30 

容量:30ℓ
2万4200円/全2色

ジッパーバック・パネルアクセス(スタッシュ20を除いて)、アイスアックス、スキー、スノーボードを搭載できるオプション、フリース製ゴーグルポケット、除湿穴、そして一番重要な凍結防止スタッシュハイドレーションスリーブと、もう一方にはBC link装備できるスリーブも搭載。

◆公式HP:http://www.k2japan.com/brand/bca.html


【Profile】
堀江 淳  Jun Horie(バックカントリーグライドNiseko
スキー技術を求めてオーストリアに渡り、15年間チロルで生活。スキー教師でありガイドでもある。滑るにおいては、状況に応じた外向傾姿勢と状況に応じた切り換えの質、斜面に対しては徹底的にファールラインにこだわりを持っている。
http://bcglide.com/


プロガイドはこんなふうに使っている!
愛用バックパックの中身を見せてもらった

今回紹介したバックカントリーガイドの中から、佐伯岩雄さん・堀江淳さんにバックパックにどのような装備を詰めているのか、そのパックの中身を見せてもらった。5月の立山で使用していたのはいずれもBCAのSTASH30だ。春シーズンは厳冬期とは多少装備は異なるが、必須の装備とパックの容量感や収納性が映像でわかりやすく理解できる。

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