車中泊のプロフェッショナルによる「①雪山車中泊のメリット・デメリット編」は公開以来、大好評。人気記事のランキングトップになるほどアクセスを集め、いかに車中泊に興味関心のあるユーザーが多いかを実感したSTEEP編集部だった。さて第2弾は、「雪山車中泊の必須アイテム」を紹介しよう。
安心・快適の車中泊のためのポイント
自由気ままに動けて、朝起きたらすぐに滑りに行ける。宿泊にかかるコストも抑えられる、など等、車中泊のメリットがよくわかると、次は「ぜひやってみたい!」となるが、実際に実行するには「安心して車中泊できる環境を整える必要がある」ことはすぐに想像できる。では、その環境づくりはどうすればいいか?
教えてくれるのは車中泊You tuber「とうちゃんはテンネンパーマ」だ。冬の豪雪地帯で子連れ車中泊の6年間を含め、スノーシーズンの車中泊歴約20年という実体験を元に、雪山車中泊に必須のアイテムを紹介してもらおう。
シーズン中の車中泊・最重要は「寒さを攻略する環境づくり」
例えば厳冬期の車中泊では、夜間の車内は一体どれくらい寒くなるのだろう? エンジンを止めてから3時間後には氷点下(0℃)になり、朝までに車内は-7℃~-15℃になることさえあるのだ。それがスプリングシーズンとはいえ油断は禁物。日中は暖かくても夜には一気に気温が下がり、想像しきれないほど冷えると思っていたほうがいい。
シーズン中の車中泊で最も重要なのは「寒さを攻略する環境づくり」だ。まず何よりも、寒さ対策と防寒に役立つアイテムを備えることだろう。ズバリ「クルマの断熱」と「体の保温」の2つが対策テーマ。この2つがしっかりできていれば、厳冬期の車中泊でも寒い思いをせずに安心して過ごすことができ、暖房器具を用意する必要もないのだ。
では、具体的に見ていこう。
大事な環境づくり1_何よりも「クルマの断熱」!
車中泊に際して、寝ているときはエンジンを切るのは最低限のマナー。エンジン停止後、車内の温度をできるだけ下げずに、寝る前までONにしていたヒーターによる暖かさをキープするにはどうしたらいいか。
必須アイテム①窓の断熱シート
まず何より窓の断熱だ。車は窓の面積が大きいので、真冬の冷たい空気はガラスを冷やし、車内の温度を下げていく。車内の窓に断熱を施してあげるだけで、冷たい外気をかなり遮断することができる。そこで必須なのが「断熱シート」だ。フロントガラス、後部ガラス、座席のサイドと、すべての窓に断熱シートを貼れば断熱効果は抜群。また、結露を抑える効果もある。もちろん寝ている時のプライバシーも守ってくれるという、マルチで重要な役目を担っている。
とうちゃんはテンネンパーマ家で使っているオススメの断熱シートは、「Aizu(アイズ)」というメーカーの「マルチシェード」。高い断熱性を持ち、冬は車外の冷気を遮断して車内の温度を保ち、夏は強い日差しを反射して車内の温度上昇を抑えたり、紫外線防止にもなるという、車中泊をする際には欠かせない強力アイテムだ。
このマルチシェード、外側はアルミ蒸着シートを使用し、内側はたっぷりな厚みの中綿を挟んでいるので、通常のカーテンや断熱シートとは機能性や断熱効果のレベルが全然違う。
窓の断熱として銀マットを紹介しているのも見かけるが、銀マットは少しでも隙間があるとそこから冷気が入ってきてしまう。その点、マルチシェードは車種に合わせてラインナップが豊富に揃っていて、窓ガラスのフィット感も抜群。なんといっても厳冬期の車中泊では命の危険に関わる。断熱シートはコスト節約よりも、性能の良いものを使いたい。
必須アイテム②床冷えを防ぐ車中泊マット
クルマの荷室に直接寝る場合は、床からの冷えに注意が必要。寝心地も求めるなら、厚みのある車中泊マット(エアマット)があるといい。キャンプブームも追い風に?今では「車中泊マット」という商品名のエアマットレスが山ほどある。選り取りみどりで選ぶのに苦労しそうだが、選択ポイントはこういったところだろう。
- 車の凸凹を解消できるか
- 車のサイズに合っているか
- 寝ている時の快適性
- セットするまでの時間
- 使用しない時のコンパクトさ
車中泊マットには大きく「インフレーターマット」「エアーベット」「高反発ウレタンマット」と3タイプあるが、それぞれメリット・デメリットもある。詳しくはまたお伝えしたいが、待ちきれない!人は、「とうちゃんはテンネンパーマ」Webサイトのコチラをチェックしてみてほしい。
大事な環境づくり2_体の保温をしっかり行う
防寒対策はクルマだけでは不十分。自分の体まわりも抜かりなく保温するべし。
必須アイテム③重ね着できるウエア
防寒の基本は、まず自分の体の保温をしっかり行うこと。STEEP読者の皆さんなら、おそらく「車内でしっかりレイヤリングしよう」で伝わるのではないか。レイヤリングの基本はご覧の通り。肌に触れる1枚目はベースレイヤー、外側のアウター(シェル)との中間にはミドルレイヤーで、空気の溜まる層をつくって衣服内温度を暖かに保とう。
山で一日遊んで下山すると、ウエアが汗や雪で濡れたまま…なかなか乾かないなんてこともる。ベースレイヤーや一番外に着るアウターも、ウエアほどしっかりした素材のものでなくてもよいので、車内用に予備を持参するとよいだろう。そして、寝る前に温泉などに入って体を温めて、それを冷まさないように車内で暖かい衣服を身につけて寝ることができれば、より良い。
必須アイテム④保温性の高い寝袋
眠るときは車中で寝袋(スリーピングバッグ/シェラフ)に入る。今は安いものもあるにはあるが、保温性や透湿性を考えるならば断然、アウトドアブランドの、素材や性能にこだわったものなどがいいだろう。
ちなみに、とうちゃんはテンネンパーマは、THE NORTH FACEの-18℃対応の厳冬期用のダウンの寝袋をずっと愛用している(上)写真。もう20年近くこの寝袋を使っているが、さすが良いものは長年使ってもヘタレない。なので、購入するときは高価でも、長持ちするので結果的にコストパフォーマンスは高くなるのだ。
夏の車中泊に使用する寝袋ならどんなメーカーのものでも構わないだろうが、冬用は保温性が命になるので、品質のしっかりとした良いものをぜひ選ぼう。寝袋の素材では大きく分けて「ダウン」と「化繊」があるが、断然暖かいのはダウン製だ。加えてダウンは軽いのと、収納時にコンパクトになるので便利さも二重丸だ。
寝袋の形にも大きく2タイプある。「マミー型」と「封筒型」だ。車中泊にオススメなのは、マミー型。ミノムシのように頭の部分を含め全身を覆うような構造なので、封筒型よりも暖かい。
必須アイテム⑤カイロor充電式湯たんぽ
衣服の重ね着にプラスして、首の後ろや腰にカイロを貼ったり、靴下の裏にカイロを貼れば、さらに暖かく過ごせる。カイロは見た目以上に強力で、10時間以上温かさが持続するものも多いし、肌に限りなく近くくっつけられるので、温もり感がなんともいえない。
使い捨てにちょっと抵抗のある人は、湯たんぽを使うというのも手だ。車内で寝る前にお湯を沸かすとなるとオオゴトだ、という人には充電式の湯たんぽ、なんてものもある。
コードレスで使える充電湯たんぽも多いので、事前に充電しておき寝袋の中に入れておく。眠っている間中ほんわか温まることができる。しかも、充電わずか10分で、布団の中で使用した場合は約6〜10時間温度が持続するとのことだ。
大事な環境づくり3_電源の確保
必須アイテム⑥ポータブル電源
ポータブル電源は、電気毛布や作業用のポータブルライト、携帯やPCの充電などにも使え、いざという災害時にも活躍するので、持っていると安心感が違う。ちょっと値段ははるが、1台あるにこしたこはない。
上の写真のポータブル電源は「EcoFlow(エコフロー)」というメーカーの車中泊に人気のモデル。大容量720Whで、ノートパソコンなら13回フル充電できる。最近は、車中泊で電気毛布を利用する人も増えている。電気毛布を夜通し使うには、ポータブル電源は必需品。
ちなみにEcoFlowは、設定温度と、その電気毛布の消費電力にもよるが、途中で充電せずに1泊〜2泊は使えるだろう。大容量でパワフルな割に、軽くて場所も取らない。フル充電するのに、わずか1.6時間あればいいという急速充電で、使い勝手の良さは申し分ない。ただし、車中泊旅に持っていく際は、自宅でフル充電しておくことを忘れずに。
必須アイテム⑦電気毛布
ポータブル電源を持っていれば、電気毛布が使える。電気毛布はシングサイズ1枚で5000円以下、大きなものでも1万円あれば手に入る。手軽なうえ、電気毛布をエアマットの上、寝袋の下など、寝床の下に敷いておけば、床からの底冷えを防ぐことができ、朝までぽかぽかの状態で安眠できるはずだ。電気のチカラは偉大、その快適度は、あるとないとでは相当違う。折り畳みもできるので嵩張ることもないから、1枚積んでおかない理由はないだろう。
電気毛布のメリットは他にもある。車中泊でエンジンをかけたまま長時間を過ごすのは安全面で禁忌というのは、周知のことだが、FFヒーターやストーブなどの暖房器具でも一酸化炭素中毒になる可能性がある。その点、電気毛布はそんな事故の心配がなくて安心だ。車内の空気も汚れず、乾燥することもないし、環境面への配慮もある。
大事な環境づくり4_雪への対策
必須アイテム⑦スノーブラシ
厳冬期の雪国にはひと晩で何十cmもの雪が降り積もることも珍しくない。車中泊するのなら、夜中にルーフに積もった雪を落としたり、窓についた固まった雪を取るのに、スクレパーのついたスノーブラシは必須アイテムだ。
滑りに出かける直前までエンジンをかけて暖まっていた状態から、長時間車を離れ帰ってくると、車の表面で溶けていた水が冷えた外気の中で凍って、そこに雪がさらにこんもりと付いていることがよくある。それをガリガリと取るのはとても厄介だ。このとき、スクレパーがついていないと氷や雪がよくとれない。そこで、スクレパーつきのスノーブラシを搭載しておくと良い。
必須アイテム⑧スコップ
「夜に駐車場に着くと、すでに30〜50cmの新雪が積もっていた。翌朝まで、寝ている間にもさらに雪が積もることが予想される」なんてことは、トップシーズンには少なくない。そんなときは、必ず夜、寝る前に車の周りの雪をスコップで除雪しておこう。
特にエンジンマフラーの周りには要注意。朝エンジンをかけたときにマフラーに積もった雪が詰まって車内に排ガスが逆流し、一酸化炭素中毒になるという危険もある。また、雪が積もり過ぎて、ドアが内側から開かなくなったり、車の外回りも雪に埋もれて脱出できなくなったら大変だ。そんなときのために、夜の間に車周りの除雪をしておくことが大切なのだ。
今回のまとめ
シリーズ第2弾は「冬の車中泊で大事なこと」「冬の車中泊の必需品」について紹介してきたが、おさらいすると、
シーズン中の車中泊で朝まで快適に過ごすコツは…
①何よりも「クルマの断熱」!
②体の保温をしっかり行う
③電源の確保
④雪への対策
雪山への車中泊に必須アイテムは、このようなもの。
●窓の断熱シート
●ボディへの断熱材
●車中泊マット
●重ね着できるウエア
●保温性の高い寝袋
●カイロや充電式湯たんぽ
●ポータブル電源(バッテリー)
●スノーブラシ
●スコップ
まだまだ春山が楽しい季節。5月の連休まで滑れるスキー場もたくさんある。春といっても備えに関しては油断は禁物だが、厳冬期に比べると車中泊へのハードルはグッと下がるのではないか。
次回の第3弾は「車中泊の場所探し」をお届けする予定!
教えてくれる人
とうちゃんはテンネンパーマ一家
年間40~50日間をハイエースで全国津々浦々、海から雪山まで車中泊旅をしながら、サーフィンやスキー&スノーボードを楽しむ4人家族。サーファーとして「いい波の近くにいたい」という思いから車中泊を始め、車中泊歴20年以上。2016~2019年には家族で車中泊日本一周も制覇している。2019年の冬からは新潟県湯沢町での二拠点生活(デュアルライフ)をスタート。自由な生き方と車中泊の魅力をSNSで発信するYou tuber、インフルエンサーだ。
車中泊イベント「居酒屋バンライフ in 新潟」2023年4/22(土)-23(日)開催!
「とうちゃんはテンネンパーマ」が4月に車中泊イベント「居酒屋バンライフ」を開催!薪割りや火起こしなどのアウトドア体験や、自然を満喫するワークショップ など、親子で楽しめるアクティビティが盛り沢山のイベントだ。新潟グルメのフードやお酒などの出店も多数あり!車中泊に興味のある方、ぜひ遊びに行ってみよう。
https://www.instagram.com/tennenperm_daddy/
https://www.youtube.com/user/masatoikebe
※ご注意いただきたいこと
スキー場の駐車場での車中泊は、スキー場に事前問合せをすることをお勧めいたします。「車中泊による前泊はご遠慮いただいております」などアナウンスしているスキー場もあります。雪山遊びを愛するスキーヤー・スノーボーダーとして、ぜひスキー場のルールやマナーを守って利用しましょう。