再生可能エネルギー100%への転換を図る、Hakuba Valleyの現在地と取り組み

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勉強会が開かれたその背景

6月9日に白馬五竜でHakuba Valleyスキー場のカーボンニュートラルの勉強会が開かれた。この集まりはHakuba Valley SDGsビジョンに基づいて設定した中長期目標に対して、エリア内で進んでいる事例や再生可能エネルギーの具体的な導入方法、エネルギー使用の現状把握といった事柄を共有しあおうというもの。

Hakuba Valleyのビジョンと目標 https://sdgs.hakubavalley.com/about/vision/

2025年までにエリア内全スキー場が電力の再生可能エネルギーへの切り替えを進めている

ーHakuba Valley 中期目標より

Hakuba ValleyがこのSDGs宣言をしたのが2020年10月。 ちょうどその頃といえば、新型コロナの影響によって、来場客が少なくなる予想がたち、ビジネス面では厳しい局面を迎えていたときだ。
だが、そうした時期にHakuba Valleyが中期目標を掲げた背景には、1万4500筆の滑り手のメッセージを届けたPOWの応援署名の後押しがある(POW JAPAN Hakuba Valley 100%自然エネルギー 応援署名記事)ことが大きい。

現在は来場者数がコロナ禍以前の水準に戻りつつあり、’23季は海外から多くの滑り手がHakuba Valleyを訪れ、状況は好転へと向かいはじめている。
とはいえ、スキー場を取り巻く自然環境に目を向ければ、12月に入っても雪が降らなかったり、高標高帯でのハイシーズン中の降雨、春時期の雪の減少傾向など、明らかな変化を現場にいる誰もが感じとっていた。なにかを変えていかないとならない。再生可能エネルギーへシフトしていくという中期目標の2025年まで、あと2年と期限も迫っている。

そうしたタイミングでHakuba Valleyが音頭をとり、この勉強会が開かれたのだ。

2時間に渡って取り上げられた話題のサマリー

当日は白馬五竜のエスカルプラザに各スキー場のスタッフが集まり、勉強会がスタート。 大きく分けて3つの話題が取り上げられ、すぐできる具体案が紹介された。簡潔に紹介しよう。

1)POW JAPAN  テーマ:気候変動の現状

  1. 現状:気候変動や温室効果ガスの増加、そのしくみ
  2. 将来予測:積雪・降雪の将来予測、白馬村の降雪量の推移、未来の滑走日数の影響
  3. エネルギーや電力と気候変動の関係:CO2削減に向けた取り組みや海外のスキー場の取り組み
  4. 海外の取り組み事例
    ※STEEP内記事も合わせて読みたい⇒世界最先端のアウトドアリゾートが取り組むSDGs/サスティナビリティとは?Vail Resort(ヴェイル・リゾート,USA) https://steep.jp/topics/63602/

※POW JAPAN https://protectourwinters.jp/

2)自然エネルギー信州ネット テーマ:再生可能エネルギー導入の選択肢

  1. 国際エネルギー機関が出した2050年までに達成すべき目標について
  2. 地域を再エネ化するためのポイント
  3. 白馬村の再エネのポテンシャル
  4. 自然エネルギーに関する課題と補助金、主に太陽光発電の導入。余剰売電モデルについて
  5. 太陽光発電雪対策

※主に長野県における自然エネルギーの情報を網羅した自然エネルギー信州ネットのHPも参照。https://www.shin-ene.net/
※雪国での太陽光発電の事例は「太陽光生活研究所」も詳しい。

3)Hakuba Valley スキー場内のカーボンニュートラルへの取り込み事例 八方尾根開発のケース

  1. SDGsマーケティング部の発足と経緯
  2. 八方尾根開発の二酸化炭素排出の現状
  3. 再生可能エネルギー切り替え状況
  4. 今後の検討事項と現在取り組んでいること
  5. その成果

※STEEP内でも取り組みをピックアップしている。「日本のスキー場で初のSDGsマーケティング部を発足!~白馬・八方尾根開発のSDGsへの熱い取り組み」 https://steep.jp/interview/51181/

4)Hakuba Valley スキー場内のカーボンニュートラルへの取り込み事例 日本スキー場開発のケース

  1. SDGs取り組みの背景と従業員への周知
  2. 消費電力の把握と電力共同購入
  3. カーボンニュートラルの検討
  4. 今後へのステップ

※日本スキー場開発 https://www.nippon-ski.jp/csr.php

現状を知って共有し合うことに意義がある

約2時間に渡ってインプットを続けた30名ほどのスキー場スタッフ。気候変動の現状を把握し、再生可能エネルギーの種類や導入へのステップの知識を得て、地域内で積極的に取り組む先行事例を学んだ。
最後に「CO2排出量計算シート」が共有された。これは、施設が使っている電力や燃料(圧雪車のガソリンや暖房器具の灯油など)の使用量を記載すると自動的にCO2排出量が導き出せるもの。各施設ごとに算出ができ、現状を知る最初のとっかかりとしては最適だ。

2019年にPOW JAPANが開催した「気候変動&地域経済シンポジウム」の開催をきっかけに、地域全体で再生可能エネルギー導入へと、明快なアクションを起こし始めたHakuba Valley。各スキー場の現状と取り組みを踏まえたうえで、地域全体でこの歩みを進めていくために、それを取りまとめるHakuba Valleyの舵取りも重要になるはずだ。 最後にHakuba Valley索道事業者プロモーションボード 高梨会長の言葉で締めくくりたい。

「今回のような勉強会はHakuba Valleyとしては初めての試みでした。現状はスキー場ごとに温度感があるのは否めないでしょう。それをまずは全員で共有することが重要です。 再生可能エネルギーへの取り組みは、わからないことも多いため、例えばCO2排出量計算シートのように、まずは知ることから始めるのも大切です。現時点での数値がわかれば、対策方法への進め方がわかりますから。 将来的には各スキー場の排出量をまとめて、Hakuba Valley全体のCO2排出総量を出すことで、大きな視点から打つ手が考えれるでしょう。そういう意味でもこの勉強会は意義はあり、今後も継続していきたいですね」

■Hakuba Valley SDGsホームページ https://sdgs.hakubavalley.com/

Photo/POW JAPAN(Chisato Sasada)

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