スキー場からアクセスできるバックカントリーフィールド「上越・群馬編」。前提として、スキー場の公認のもと、バックカントリー(BC)への入り口にゲートが設けられているところをセレクト。そのフィールドでBCガイドサービスを提供しているプロガイドたちから得たコメントを中心に構成した。
[留意点]
ここで紹介するように、スキー場からアクセスできるBCフィールドはたくさんある。ただ、スキー場のリフトを使って登った標高地点が起点になるのは、いきなり深い山へエントリーすることを意味する。その事実を自覚し、入念な準備や最大限の注意が必要だ。しっかりとした装備、山でのマナーやリスクに関する知識、万が一の際の救助方法や保険、自身の健康管理など含めて、高い意識で臨もう。
より安全にBCでの滑りを追求するには、何よりBCガイドツアーに参加するのが良い方法だ。BCに入る前にゲレンデでギアの使い方やオフピステでの滑り方など、必要なことをレクチャーしてもらえたりもする。BCに存在する多様なリスク管理をプロフェッショナルに任せるのはスマートな選択であることをまず先にお伝えした上で、リフトアクセスができるBCフィールドを見ていこう。
かぐらスキー場|新潟県
BC入門者がデビューするのに最適
主要ポイントまで60分程度のハイクでリーチできる
首都圏のBC志向ユーザーが集まるスキー場。ここをベースとするガイドクラブも多く、BC入門者にやさしいスポットとしても知られる。
かぐらスキー場の最上部、第5ロマンスリフト(通称ゴロマ)を下りるとBCゲートがある。天候不順や斜面状況不良以外の午後12時または13時半までオープンしている(時期により異なる)。ゲート管理のパトロールに登山届けを提出して、ビーコンチェッカーを通ってフィールドへ出る。
ここからハイクして、神楽峰、反射板、中尾根、北斜面、三角などといった通称名が付けらているエリアへ。主要ポイントまでは通常60分程度のハイクで行ける。稜線からの展望は、エリア最高峰の苗場山を始め、谷川岳連峰、魚沼三山、遠くは妙高や白馬エリア、日本海までもが見渡せる絶景。滑るのはもちろんだが、この景色を見るだけでもハイクの価値はある。
標高2000m~1500mがBCエリアで、それぞれの滑走ポイントは、オープンバーン、ツリーなど多彩な斜面構成。コースの取り方で大きな斜面やロングランなど、標高差400~500mのストレスのない斜度感の新雪が楽しめるのが特徴。雪崩が頻繁に起こるような急斜面は少ないが、道迷いや沢に落ちるという事故は毎年起こっており、地図が読みこめないBC初中級者だけで行けるほど簡単ではない。ガイドクラブのツアーや、経験者とともに楽しみたい。
いずれのエリアからは、かぐらや田代のスキー場と戻れる。スキー場では午後14時までにゲレン内に戻り、必ず下山報告の電話連絡を入れるよう指導している。
【コメント】STEEP編集部
ムイカスノーリゾート|新潟県
なだらかな斜面を1.5kmのロングラン
BC初心者でも楽しめるフィールド
新潟県南魚沼市六日町にある「ムイカスノーリゾート」のゲレンデサイドに広がるバックカントリーエリア(管理区域外申請山岳コース)。豪雪地帯にあり、ハイシーズンは連日のようにリセットされるドカ雪パウダーが楽しめる。
第3ペアリフトを下りて約150m(約15分)ハイクアップでスキー場の山頂(748m)まで上がると、その下にバックカントリーフィールドが広がっている。ムイカは山頂付近の標高が1000mにも満たないのに、まるで森林限界のように疎林帯となっているのが特徴。そこは広大な斜面のなかに点々と木々が生えた神秘的な世界だ。
このハイクアップゾーンは歩くところだけ圧雪車で踏んでいるため、つぼ足でも歩ける。しかし、雪が多い日はクライミングスキンやスノーシューを持ってきたほうが快適だ。また、ハイクの距離は150mしかないので、本格的なバックカントリーに出る前にクライミングスキンをつけて登行練習をしたい、という初心者にもオススメだ。
このバックカントリーエリアの魅力は、なだらかな斜面をロングランできること。トップの標高748mからボトムの400mまで、全長1500mの距離を滑れる。また、滑り降りたら麓の駐車場に戻って来られるとあり、バックカントリー初級者やチャレンジしてみたい、という人でも楽しめるエリアになっている。
この管理外申請山岳コースへ入るためには、事前にムイカスキー場のチケット窓口で申請を行い、腕章をつけて行く必要がある。腕章のデポジット1000円必要。腕章返却時に返金される。
【コメント】STEEP編集部
妙高赤倉観光リゾート|新潟県
植生の変化を味わいながらツリーランが楽しめる
行けば行くほど奥深い魅力にはまる
豪雪地帯として有名な妙高。エリアのシンボル妙高山は、本峰と、前山、三田原山、赤倉山、大倉山、神奈山という5つの外輪山からなっている。山麓には赤倉観光リゾート、赤倉温泉、妙高杉ノ原、池の平温泉アルペンブリック、関温泉などのスキー場と7つの温泉地からなる妙高高原温泉郷がある。
5つの外輪山はどれもバックカントリー滑走が可能だが、ゲートが設置されているのは赤倉観光リゾートだ。そこからアクセスするのは前山。ホテル第5リフト終点からシールをつけて登り始め、標高差450m弱を登ると山頂に着く。そこからスキー場と並行するように滑り、スキー場に戻ってくる、というルートだ。
ツアーなら9時に集合してリフトで上がり、10時に登り始めて昼すぎに稜線到着。そこから滑って解散は15時頃というワンデーツアーが一般的。前山山頂に登るには、部分的に急斜面もあり、シール登行でのキックターンに慣れていないと苦労する。また、過去に雪崩事故が発生した場所もあるので、安全なライン取りが求められるという意味でも、やはりガイドツアーを利用するのが安心だ。
森林限界は超えていないので、稜線まで行っても木はあるが上部は疎林で、中間部は適度な木の間隔を滑っていくことになる。上部はダケカンバ、途中からブナの樹林帯と変わっていき、植生の変化を楽しみながらツリーランが楽しめる。稜線に上がれば北信越の山々がよく見え、日本海まで見渡せる。
1月、2月は雪質のコンディションはかなりいいことが多い。逆に降り過ぎてしまいBCに行けないことも。広大なフィールドのなかから、日々の天候や雪の状態によって柔軟に行先を選んでいくといい。ここに山を熟知した地元のガイドクラブの必要性と価値があるわけだ。3月になると気温や日射の影響が大きくなり、良い雪が保たれる時間が短くなるので、一般的になパウダーシーズンといえば1月中旬~3月上旬となる。
技術的な難易度は、外輪山の稜線まで上がることを考えると対象はBC経験者で滑走技術が中級者以上。まったく初めての人だとやはり難しいだろう。ただ、経験が少ない場合には稜線までは行かずに途中まででも十分楽しめるし、外輪山以外の選択肢もある。そのあたりの設定もレベルに合わせて調整することができるフィールドだ。
妙高BCの魅力は、白馬の山並みのような見た目のインパクトではなく、下から見ているだけでは一見どこが良いのかがわかりにくいところ。妙高は行けば行くほど奥深さがある。山自体の深さもそうだし、斜面の変化が大きくて、その変化が次々に続いていき、単調でないので、まさにツアーを楽しんでいる感覚になる。それぞれの好みの部分が大きいが、ちょっとBCの魅力がわかってきた頃だと、妙高の本当の良さがよりわかるかもしれない。実際に白馬の栂池や新潟のかぐらでBCの経験を積んでから妙高に来ている人がかなり多い。
【コメント】
中野 豊和(なかのとよかず)
インフィールド 公式HP https://www.in-field.com/
STEEP内紹介記事 https://steep.jp/spot/2765/
谷川岳ヨッホ by 星野リゾート|群馬県
急峻な斜面が多い山岳地帯
ガイドツアーや熟練者と滑るのが堅実
’24-25季からスキー場の名称が一新、「谷川岳ヨッホ by 星野リゾート」は、ロープウエイ、リフトを利用してのBC滑走ができる谷川岳エリア。山頂トップからは雪崩必至の森林限界急斜面尾根が何本も伸びている。ここに挑戦する冒険的滑走を楽しむことも可能だが、雪の状況や天候、斜面変化に対応できる熟練の上級者でないとオススメできない。
BC利用者は山麓ロープウエイ駅舎で山岳届けを提出。多くのBC滑走者が使うのは西黒沢と呼ばれるポイント。リフトアクセスで頂上部へ。ここから稜線上にあるゲートを通りBCフィールドへと向かう。
スキー場頂上部から稜線へ、ここから延びる尾根のオープンバーンや林間をロープウエイ山麓駅舎方面へ向けて滑っていくが、このエリアの斜面の多くはとても急峻だ。雪崩事故が頻発するエリアとしても知られ、40度を超えるようなスリリングな斜面も多く、滑走時の雪崩発生には常に意識が必要なほど。天候悪化時の滑走や単独滑走は控え、ガイドツアーに参加したり熟練者と滑ることが推奨される。ゲートを通らないその他のエリアは滑走禁止。雪崩事故や遭難事故多発な場所だけに、ルールを守っての滑走が必要だ。
【コメント】STEEP編集部