新しい札幌ステイの形。定山渓温泉をベースにしてパウダーを滑ろう

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絶好のパウダー日和、到来

2022年2月下旬。北海道にしては珍しく各所で交通機関が麻痺するような大雪に見舞われた。札幌市内も一部は除雪が間に合わない状況で、裏道はクルマ1台が通るのも一苦労するほど。降雪だけでなく、強風の影響もあって札幌周辺のスキー場は大雪に恵まれながらも、上部がクローズしたり、ゴンドラが運休したりしているらしい。

すすきの近辺の歩道も壁ができて歩きにくい
除雪でできた壁はまるでミルフィーユの断面のよう

2/28-29の2日間、札幌の奥座敷と呼ばれる定山渓温泉にステイしながら、周辺のスキー場を案内するモニターツアー「北海道パウダーライナー HOKKAIDO Powder Liner」に参加することになった。定山渓温泉は札幌中心街から車で約45分程の場所にある温泉情緒あふれる観光名所。国道沿いには大きなホテルや旅館が並び、豊平川周辺には雰囲気がいい温泉宿も多数ある。

豊平川を挟んで温泉宿が建つ定山渓温泉

普段なら通り過ぎがちな場所だがここを拠点に置いて行動すると、実はキロロ、ニセコやルスツは60km圏内、札幌国際なら25kmほど。テイネもそう遠くない。市内からそれぞれのスキー場へは行き帰りの渋滞に巻き込まれやすいが、定山渓温泉からならばスマートに移動ができる。札幌に来て、歓楽街すすきのを楽しむのも捨てがたいが、温泉に浸かりながら北の幸を味わい落ち着いて滑りに行くのは新しい組み合わせだ。
それに、今回のツアーには入っていないが、定山渓温泉周辺にはあまり知られていないBCのツアールートもある。限られた時間のなかで滑ることを第一優先に考えるならば、これほど理にかなった場所はないだろう。

すでに数年前からフォトグラファーのニール・ハートマンや中田奨(今回の写真担当)といったコアな面々も、定山渓温泉に拠点を構えて、各地へと足を運んでいる。ニセコ・キロロ・札幌市内を結んだ三角形の真ん中あたりに位置するこの場所は、どこへ行くにも調子が良さそうだ。今回はそれを実体験してみた。

候補のスキー場はいくつもあるが、初日はどこへ……

このツアーにはメインガイドとして佐々木大輔、サブガイド照井大地の2名が帯同してくれる。これまで佐々木大輔と一緒に滑って、コンディションを外した日はほぼないため、験を担ぐ意味でも否が応に期待が高まる。すでに前日までの降雪でその兆候はある。

2日間のガイドを務める照井大地(左)と佐々木大輔(右)

ツアー前日に行われたブリーフィングに集まった参加者は普段からBCやパウダーを滑っている人が多いとあって、足並みも揃いそうだ。ますます気持ちが高ぶる。前述したように荒れた天候の翌日とあって、ガイドの2人は慎重に行き先を考えている。事前にいろんな情報と現地に行った人たちの声を参考に、初日はキロロへ向かうことが決まった。
朝7時に定山渓温泉を出発し札幌国際を経由して、キロロへと向かう。バスの車内では佐々木大輔がなぜキロロを選んだのかを簡潔に説明してくれた。

ツアーではバスを貸し切っての移動のため、雪道運転のストレスも皆無

まず、前日にスキー場上部がクローズしていたため、パウダーゾーンに人が入っていないこと。南西の風が吹いていたため、北東面の風の影響が少ない斜面を狙いやすいこと。もう一つの候補だったルスツの天気予報が悪いこと、などさまざまな気象状況を複合的に組み合わせた上に、現地の声を聞き取って判断した場所がキロロだった。

「定山渓と国際でも吹いていた風向きが違うと雪の積り方も変わってきます。定山渓では木の真上に雪が載っていたと思いますが、国際を超えると木に雪はついていません。これも風の影響ですよ。ほんの数キロ違うだけでも状況は大きく変わります」

佐々木大輔の言葉を聞いて車窓から様子を伺ってみる

バス乗車中も気になる様子を見つけた佐々木大輔が参加者に声をかけてくれる。何気なく見ている車窓からの景色も、そういった視点で見ると、なるほど、情報の宝庫だ。

バスに揺られて下道を約1時間半。キロロに着くと小雪が混ざった薄曇りの空模様。晴れてはいないが、斜面は見えるので滑るのに苦労はなさそうだ。早速滑る準備をして山頂へ上がっていく。今回はスキー場だけでなく、ゲートからアクセスするBCエリアも滑走する。そのため、事前にアバランチトランシーバーをはじめとしたセーフティギアをチェック。ガイドが2人ついているため、BCを滑る際のリスクも軽減でき、比較的安心して滑れる。

アバランチトランシーバーのチェック
キロロのBCへアクセスするゲートには動作チェカーも

前日まで降った雪がまる1日溜まったおかげか、スキー場上部からアクセスした斜面はきめ細やかな雪が積もっている。木々の間を滑る1本目は標高差100mほどの斜度がきつくない中斜面。足並みを揃える意味でも途中で止まりながら滑るのだが、止まりたくないのが本音だ。スキーを踏むと面で雪を感じ、その受けた分だけ雪がふわふわと舞い上がる。気持ちいい一本だ。周りをみると、他の参加者も想像以上の雪の良さに止まることを忘れそうなほどスピードを出してターンをしている。さすがガイドが見立てた場所だ。

そこからはお昼休憩までの約4時間、滑ってゴンドラに乗ってを繰り返す。滑る斜面のほとんどがまっさらなノートラック。風の影響が少ないツリーランを中心に新雪を味わう。

お昼休憩の1時間を挟んで、キロロゴンドラの運行が終わる15時ギリギリに乗り込むほど滑りに滑る。滑走レベルの上手い人が集まったツアーだったのか、それともガイドをする2人のペース配分が良かったのか。いずれにせよ、終了まで淀みなくパウダーを滑り尽くすツアーは大満足で初日を終え、一路バスで定山渓温泉に戻っていった。

宿に帰ってきてからのお楽しみは温泉だ。大浴場の目の前には定山渓の山々が見渡せ、湯船に体を滑り込ませると冷えた体が芯から温まってくる。何本も滑った体の疲れもお湯に馴染むほどリラックスできる。温泉とスキーは切っても切り離せない関係だと思いながら昼間に滑った体をいたわる。定山渓温泉をベースにするメリットはこれだけでも十分と思えるほど。

2日目に向かう場所の作戦会議。次はニセコだ

夜には翌日に行く場所のブリーフィングが行われた。初日にキロロのいい斜面をガイドしてもらったこともあって、行く場所に疑問を思う人がいるはずもない。2日目は、早い時間は雪雲が残るが天気はいいと予想されるニセコへ足を運ぶことになった。

宿の一室を借りてガイドと参加者が共に周辺スキー場の様子を共有する

2日目、宿を出たのは6時30分前。ニセコまでは前日のキロロよりも少し距離が延びるが、曲がりくねる山道を行くキロロと移動時間はほぼ変わらずニセコ東急 グラン・ヒラフに朝8時には到着した。

ニセコベースに集まった参加者。左の佐々木大輔の右隣に映る赤いウエアが渡辺洋一さん

スキー場は吹雪いており視界はとても悪い。雪は良さそうだが、想像以上の悪天候に参加者の表情も曇りがち。そこへフォトグラファーの渡辺洋一さんがやってきた。今回はゲストガイドとしてスポット参戦してくれたのだ。ニセコの隅々までをよく知る彼の登場とあってガイドの佐々木大輔は

「今日は洋一さんにガイドしてもらいましょう!!」
と振ると洋一さんも、
「いやいや、ガイドは大輔でしょ、笑」

とじゃれ合いながらスキー場のアイコンと言えるリフト「センターフォー」へ向かう。まずは名物コースの「スーパーコース」を落とそう。ニセコはスキー場内にコースを区切るロープなどはほぼなく、どこでも自由に滑ることができる。昨晩から積もった雪が載ったコースはどこもパウダーで、スキーをどちらへ滑り込ませても新雪が舞い上がる。ローカル達の歓喜の声があちこちから聞こえてくる。

滑走1本目はご覧のような吹雪模様。ところが……

そうこうしていると周辺の景色がまったく見えないほど横殴りの雪が、1本滑り終えると収まりはじめ、みるみるうちに青空が広がり、向かいに佇む羊蹄山の姿が見えてくる。早い時間に雪雲が残るが概ね天気は良いと言っていた前日のブリーフィング通りの空模様に参加者も驚きを隠せない。雪が良くて天気もいい最高のコンディションが突然やってきた。ゲストガイドの洋一さんが晴れた様子を見て、俄然動きが早くなる。

「このタイミングで、全員一緒にパウダーを滑りましょうよ」

と声をかけてくれ、一斉にゴンドラへ向かって滑り込む。目の前にそびえる羊蹄山を眺めながら、皆で下までフレッシュなパウダーをいただく。このようなグッドコンディションのなかを滑れるのはなかなかない。参加者全員でこの気持ちよさを共有できた瞬間だった。

雲が移動し光が差し込む。晴天のなかノートラックパウダーだ

グラン・ヒラフからニセコHANAZONOリゾートへ移動しながら、パウダーが滑れるポイントを潰しつつ、ベースまで降りていく。途中から風が強くなり、グラン・ヒラフへ戻るためのリフトが止まってしまったため、最後はHANAZONOからグラン・ヒラフへと巡回バスで戻り2日目が終了。あとは定山渓温泉へ戻りツアー解散だ。

ツアーのまとめ。可能性しかない定山渓温泉ステイ

2日間のツアーは、両日ともパウダーに当たった。これもひとえにガイドの目利きが素晴らしかったに尽きる。選んだスキー場はもちろんのこと、それぞれのスキー場でどの斜面に新雪が残り、気持ちよくライディングできるかまでをカバーするガイディングは満足度が高い。
拠点にした定山渓温泉からスキー場の選択肢が多いのも、パウダーを当てやすい要因のひとつなのは間違いない。山を、峠をひとつ超えるだけで、定山渓とはまったく状況が異なるのはこの2日間で身を持って体感した。普段滑り込んでいる地域ならば、なんとなくの予測が立つが、年に1,2度訪れる場所で的確に当てるのはやはり難しい。

そこにスキー場だけでなくBCツアーもチョイスに入れれば、よっぽどの悪天候に当たらない限り、パウダーを滑れる確率は格段に上がるはず。とくに北海道初心者や、限られた時間のなかで確実にいい思いをしたいのならガイドにお願いするのがてっとり早くてオススメだ。

定山渓温泉には高級な温泉旅館から老舗旅館、コンドミニアムなど宿泊タイプもさまざまある。にぎやかな札幌市街地ステイとは趣向を変え、温泉を満喫しながら、パウダーを当てる確率を高める、定山渓温泉ステイの札幌スタイル。この冬の滑走プランにぜひとも組み込んでみて欲しい。

Photo/Tsutomu Nakata

ツアーのレポートムービーをチェック


今シーズンも開催!佐々木大輔と定山渓でパウダーハント、モニターツアー参加者募集

定山渓温泉に宿泊しながら、札幌国際やニセコ、ルスツやキロロなどで、当日のコンディションで滑るゲレンデをセレクトするツアーの募集が今年も開始。このツアーのガイドは昨シーズン同様、国際山岳ガイドの佐々木大輔が務める。

こちらのツアーは「定山渓温泉ステイモニターツアー」と題し、

・BCまたはサイドカントリー経験者、もしくはBCやサイドカントリーで他人の助けの必要がなく、行動・滑降が可能な方

・旅行終了後にアンケートにお答えいただける方

が参加条件となっている。

出発日は1月13日・2月17日で、2泊3日の場合は66,000円から、3泊4日は88,000円から(2名1室利用)。

各コースともに定員に達し次第募集終了となるので、気になる方は要チェックだ。

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