無限のパウダーフィールドが広がる豪雪&ツリーラン夏油高原|よく知るライダー2人が攻略法を伝授

岩手県の南西部にあり、都心からおよそ500km。”豪雪”をウリにする夏油高原。STEEPの読者であれば、一度は行ってみたいと思うスキー場だ。その言葉通り、ハイシーズンは毎晩のように雪が降り、1月のパウダーリセット率は70%、2月でも60%以上と驚異的な数字を誇る。

そんな夏油はパウダーをもとめて熱狂的なファンも多いが、滑れるエリアも広い。そこで今回はこのスキー場をよく知るスキーヤー梶田アレンとスノーボーダー降旗由紀がともにセッションした日をもとに、夏油の魅力を解き明かしていく。

まずはセッションした日のクリップをご覧いただきたい。

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なぜ夏油はこれほどまでに雪が降るのか

そもそも、国内で降雪量が多い地域といえば、青森県の八甲田、山形の月山、新潟県の妙高周辺などいくつか有名どころが挙げられる。そんななか、夏油が位置する岩手県の、しかもゲレンデトップの標高が1,077mのこのゲレンデになぜこれほどの雪が降るのか。

まず、日本に雪をもたらす雪雲は、日本海の向こう側、シベリア半島からやってきて、それが日本列島にぶつかって雪を降らせるわけである。秋田県との県境である奥羽山脈の中でも、夏油の北には秋田駒ケ岳(標高1637m)、駒ケ岳(標高1613m)、八幡平(標高1613m)が連なり、一方南には栗駒山(標高1627m)が位置する。その中間の、まさに雪雲の通り道に位置するのが夏油高原となる。逃げ場のない雪雲が夏油高原めがけて集中し、雪を降らせる。それゆえに毎年gooスキー場積雪ランキングでは上位に必ずランクインし、パウダー遭遇率も高いというわけだ。

夏油のツリーランエリアは広大!

扇型となるゲレンデベースには天井の高いセンターハウスがあり、食事、レンタル、駐車場とゲレンデ施設の全てが一箇所に揃う。また、ベースからコースのトップまで2つのゴンドラが架かるので、一本ゴンドラに乗るだけで全てのコースを滑れるのだ。搬器のなかであれば雪にさらされることもないので快適に移動できる。横に広いゲレンデで、さまざまな施設が効率良くベースにまとまっているスキー場なのだ。

そんな夏油は恵まれた環境と降雪を生かし、ツリーランエリアに力を入れており、10箇所ものツリーランエリアがある。それぞれ、斜度や地形変化など特色があるが、総じて夏油のツリーランエリアの特徴はブナの木が広い間隔で生えている点にある。木の間隔が広いので、忙しくなくターンする必要はなく、美しい景色のなかを悠々と滑ることができる。またエリアは4段階にレベル分けされており、自分のレベルで入れるツリーランエリアがわかりやすくなっている。

各ツリーランエリアの難易度を詳しく解説した記事が別にあるので、もっと詳しく知りたい人はこちらをチェックしてほしい。

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また、このツリーエリアは完全な自己責任エリアであり、ヘルメット着用と携帯電話を持つことが必要となる。もしもの事故のためにゲレンデへの緊急連絡先(電話:0197-72-8848)を把握しておくこと。ゲレンデ非管理のこのエリアの状況は、ホームページでも随時更新されているのでチェックしておこう。

スキー場内にもこれだけのツリーランエリアに加えて、チケットセンター横の「マウンテンインフォメーション」に登山届を出せばさらに広い森の中を滑走することもできる。バックカントリーエリアなので、現地の地形をよく知る人とともに滑りに行こう。

横に広い夏油高原

ベースにあるスキーセンターにはその日のゲレンデ状況が一目でわかるマップを配置。滑る前に目を通そう

マウンテンインフォメーションで登山届を出す2人

ライダーが教える夏油の魅力と攻略法

ここで夏油の魅力をスノーボーダー降旗由紀に聞いてみよう。

取材した1月某日も雪が降り前日のトラックが消えた。パウダーに心躍らせるスノーボーダー降旗由紀とスキーヤー梶田アレン

「新潟などの日本海側も多く雪が降ると思いますが、私のイメージでは夏油はその軽い版の雪が降るというイメージです。ディープで軽いなんて、ほんと最高ですよ。ほかのスキー場で降ってなくても、夏油だけが降ってる日ってよくあるんで、私の中で一番”安心して来れるスキー場”っていう感じですね。私の場合、宮城にベースを置いていて、滑る時は東北エリアでその日のいいところを狙っていくことが多いのですが、周辺のスキー場が降ってなくてもやっぱ夏油降ってたね、ってなります。困った時の夏油です笑」

雪質を勝手知ったるように、軽く当てこむ降旗
エリアがとにかく広いので、スノーボーダーでも悠々とターンを刻める
サミットの下部にある落ち込む地形を使ってジャンプも

「ゴンドラで上がれてパウダーを滑れるというのが東北エリアでは少ないんです。夏油は極上のパウダーやBCを回せるのでとてもいいですよね。それと”走る雪”が降るので、スノーボーダーに最適なんです。スノーボードだとスタックしたらスキーヤーと違って漕げないので、ライン取りがかなり重要なんです。スタックするとコースに復帰するまでに、時間がかかるし、体力も使ってしまうので危険が伴います。夏油は板が走りやすい雪質なので、スタックすることもそれほどありません。それでもたまに雪が降りすぎてスタックしてしまうような日もあるのですが、そんな時はツリーランエリアを開けないんです。スキー場のスタッフがそういった知見を持ってるのも魅力ですね。このスキー場のスタッフは雪のことをとてもわかっていて、お客さんの安全を第一優先で考えてくれるから安心です」

美しいブナが立ち並ぶのが夏油の特徴。白く雪化粧した森の中に佇むだけでも心地いい

スキーヤー梶田アレンは夏油の魅力をこう語る。

「夏油はとにかくゴンドラ回しが効率良くて、斜面もたくさんあるので滑り込みたい時に来たくなりますね。天候も当たって、モチベーションも高くて、よし、今日は滑るぞっていう気合いが入った時は迷わず夏油です。ツリーランはもちろんいいんですけど、非圧雪斜面や脇パウ、当て込める壁があるので、ゲレンデを滑っていても面白いのが僕の知る夏油高原です。なので、僕は降った日はとりあえず非圧雪斜面のB3へ行くんですよ。B2も急斜面で非圧雪なので、朝一に滑走すると気持ちいいんです。ゲレンデを滑ったら、そこからツリーランエリアのサミットやシューターなどへ行きますかね。そこで滑り込んで、ボコボコになるまで滑ります。その後まだパウダーが欲しければ登山届を出してバックカントリーエリアへ行くのもアリですね」

朝一によく訪れるというB3は斜度もあって、スピードも出る
滑れるラインが無数にあり、どこを切り取っても絵になるスキー場
何度も顔にパウダーを浴びた1日だった

「ほかにもビーチのあたりはボコボコすぎなければ、マッシュがあって飛びたい人にはオススメですよ! ツリーランはエリアが広くて間隔もあるのでランディングも確保できるし、ターンも刻みやすい。土日は競争率も高まりますが、スキーヤーズベッドを利用して平日に狙いに来るのもおすすめですね。それと、夏油は大小いろいろな沢がいくつもあるんですが、スキーヤーなら良さそうな斜面をトラバースしながら滑って、次はこっちの面へ移動して滑って、という風に自分の好きな斜面を選びながら滑れるのも面白いですね」

異なる板を履くもの同士のセッションは同じ地形でも違った遊び方や視点が生まれて面白い

ジャンプはお手のもの、と軽く飛ぶ梶田

ツリーランやパウダーだけでなく、グルーミングバーンの面白さについては降旗も同じ意見だ。

「グルーミングバーンはいいですよね。段差もないし、コース幅も広い。夏油はパウダーやツリーランっていうイメージが大きいけど、グルーミングもあって、パークもあるからファミリーでも楽しめるんですよね。私はよく滑るのはストリームとシューター、もしくは第2ゴンドラ横の非圧雪コースに行ったりしてます。ツリーランエリアをまんべんなく滑っていますが、シューターの1番が斜度があってとくに好きですね」

「ジャンプポイントがいくつかあって楽しいですよね。沢もいくつもあるから、スノーボーダーとしても楽しいです。スノーボーダーにとっても沢がいっぱいあるから、HPみたいに滑れるから面白いんですよね。今日はスキーヤー目線であっち行ったりこっちいったりできたので面白かったですね」

夏油はグルーミングバーンの質も侮れない。圧雪もしっかり入っているし、急斜面だし、幅も広い。一度滑ればいいスキー場だということがすぐにわかる

タイトな沢からルーズな沢までさまざまあり、遊び方の幅が広い

夏油のツリーランエリアはとにかく広大で、無限のパウダーフィールドが広がっている。そんなエリアを十二分楽しむためにガイドツアーも設けられている。夏油の地形を熟知したガイドだからこそ知る、ツリーランエリアガイドや豪雪ガイドなど、はじめて夏油を訪れる人にもわかりやすいサービスが充実しているので、そちらもチェックしてみよう。

ガイドサービスについてはこちら

ファシリティーも充実する夏油

梶田も前述したように、スキーセンターには「スキーヤーズベッド」という宿泊施設が併設されているのが、夏油のユニークなポイントのひとつ。ドミトリータイプのベッドが用意されており、リーズナブルな価格で宿泊できる。滑り込みたい人にはうってつけのサービスだ。価格が抑えられているだけでなく、夕朝食を食べる休憩スペースには滑るのが大好きな人々が集まって楽しく過ごしており、アットホームな雰囲気がまた堪らない。もちろん個室タイプの部屋もあるので、連泊して夏油のパウダーを満喫したければスキーヤーズベッドを利用するのもオススメだ。

宿泊についてはこちら

また、山の上にありながら、アクセスが充実しているのも見逃せない。新幹線駅である北上駅からシャトルバスも出ており関東圏の人でも車を使わずに楽々とスキー場へ来れる。
まだまだ雪のいいシーズンが続く。今季は一度、聞きしに勝る”豪雪”を体感しに、夏油へ訪れてほしい


今回滑ったライダー

SKI: 梶田アレン(左)
岩手県の八幡平エリアをベースに、モーグルやビッグエアなどの競技を経て、FWQやJFOといったフリーライドの大会やBCエリアで活動・作品撮影を行う。
Instagram:@alain_natural

SB: 降旗由紀(右)
元ハーフパイプ選手として世界を転戦。現在は東北のバックカントリーエリアを中心に最高のパウダーを追い求めている。自身のショップ「DREAD HOUSE」も経営し、スノーボードシーンを盛り上げ続けている。
Instagram:@yukifurihata


■Information

夏油高原スキー場
〒024-0322 岩手県北上市和賀町岩崎新田国有林内
公式サイト:https://www.getokogen.com/winter/
公式SNS:InstagramFacebookTwitterYouTube

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