Photo/高橋とんこ
Hakuba Valley全山共通シーズン券(以下通称であるバレー券に省略)を滑り手たちはどう使い込んでいるのか?
両親の仕事がら海外生活が長かった20歳のスノーボーダー・大坪脩三郎さんのバレー券のある冬のライフスタイルを垣間見てみよう。スキーヤー五味秀昭さん編はこちら。
カナダ・カルガリーでハマったスノーボード
現在20歳の大学生、東京在住の大坪脩三郎さん。2019年にはJSBAポイントランキング3位でプロ昇格を果たしたプロスノーボーダーだ。彼は雪のない時期を東京で過ごし、雪が降り積もると白馬に拠点を移しHakuba Valleyを滑り尽くしている。
父親の仕事の都合により世界各国を移り住んだ幼少期。マレーシア、アゼルバイジャン、アメリカ、カナダで過ごすなか、オリンピック開催地のカナダ・カルガリーでスノーボードにのめり込む。ここはW杯も開かれるほどのサイズをもつハーフパイプや、コンペティション仕様のビッグエアがあったことから、周りは本格派スノーボーダーばかり。
その影響を多大に受けた結果、父親がその後ロシアへと転勤になったが、彼は母親と日本へ戻りスノーボードの練習に励む日々を選んだ。拠点としたのは大阪KINGS。そこで岡本圭司のコーチのもと実力を伸ばしていった。その岡本が拠点にしていたのが白馬だったのだ。
バレー券を使い始めたのは22−23季から
「五竜の麓に圭司さんがやっているシェアハウス『BASE GORYU』があったんです。高校の頃からシーズン中はそこが拠点でした。はじめはスキー場まで15分ほど歩き、五竜とヨンナナ(Hakuba 47、以下47)を滑る毎日。パークがメインだったので、3シーズンは47のパークをひたすら滑ってたんですよ。
というか47しか必要なかったんですね。ジャンプとジブができれば良いって考えと環境だったんで、笑。
それが、21−22季にハクノリ(白馬乗鞍温泉スキー場)とコルチナ(白馬コルチナ)で開かれたJFO(JAPAN FREERIDE OPEN:ライダーが主催するフリーライド大会)に参加して優勝したときに、フリーライドの世界もやってみたいなと思ったんです。圭司さんからもいろんな山を滑ったほうがいいって言われて。
でも、その時のチケットは五竜47しかなくて、いろいろ調べたらバレー券があることを知って、22−23季にはじめてバレー券を買ったんです」
22−23季からバレー券を利用しはじめた大坪さん。シーズンに入ると1月中旬まではパークに縛られず自由に山を滑るスタイルでHakuba Valleyの各スキー場を滑り、2月以降はスロープスタイルやビッグエアのコンペティションに出場するため、全国各地を飛び回る。大会の合間に白馬へ戻ってきたら主にパークをメインに滑るのがシーズンの流れだ。
「以前までは五竜47以外のスキー場へ行くのに1日券を買ってましたけど、それはやっぱりお金かかるじゃないですか。
バレー券は学生の僕には大金ですけど、シーズン中にHakuba Valleyのスキー場を滑るのに金銭面の心配はなくなりますから、迷いなくいきましたね。
シーズン中は大会が近いと47のパークがメインになりますが、シーズン序盤は天気予報を見ながら雪が降りそうだったり降っている場所をチェックして、朝から晩まで滑ってましたね。五竜47はもちろん、八方やコルチナが多かったです。
シーズンエディットという形で冬が終わったら映像も作っているので、パウダーやフリーライディング、パークなどをひとつのエリアで撮れると、撮れ高のバリエーションも増えます。
とくにパークは47だけでなく、岩岳や八方のパークに行くことも多いですね。あそこは47と違って地形を交えたパークになっているので滑っていて面白いのはもちろん、画が変わるから撮影するメリットも大きいです。
あと、春時期に栂池の上部にできるビッグキッカーイベント「ハンマーバンガー」にも気兼ねなく参加できるのは良いですね。
春は各スキー場でのイベントも多いのでリフト券代のことを考えなくて良いのも助かります。パークもパウダーのように時期ごとに変化するので、それに対応できるのがありがたいです。アイテムが変わったり、規模が大きくなったり、それこそ地形パークになれば、行くタイミングによって状況は随時変わりますから。
パウダーもパークもそういった変化に躊躇なく対応できるし、なにより選択肢が多いのがバレー券を持ってから感じた大きなメリットでしたね」
Hakuba Valleyのスキー場や山はいつ滑っても飽きない
大坪さんはスロープスタイルやビッグエアの大会に出場するため全国を飛び回っている。22−23季はのべ2週間ほど福島県・アルツ磐梯、群馬県・パルコール嬬恋、長野県・X-JAM高井富士、岐阜県・鷲ヶ岳、北海道・ニセコHANAZONOを訪れた。
とはいえ、大会がメインのためそれらスキー場を存分に堪能できるといえばそうでもない。むしろ他のエリアを滑るほど、普段滑っているHakuba Valleyの良さが身に染みるという。
「大会のためにそれぞれのスキー場へ行っているので、くまなく滑っているわけではないんですが、どうしても飽きちゃうんですよね。基本的には午前中は大会の練習でフリーで滑るのが午後になります。そうすると、どこも大概いい場所は滑られてギタギタ。午前中いいところでパウダーを滑って、午後は違うスキー場へ行きたいって気持ちになっちゃう。
ひとつのスキー場でそれをやるのはやっぱり限界があって、そう考えるとバレー券のシステムってすっごい良いなって、他の地域へ行くと改めて感じますね」
そんな大坪さん。22−23季にバレー券を持っていて良かった1日を聞いてみた。
「2月の頭に八方、コルチナ、栂池3つのスキー場をはしごした日ですね。天気は曇予報だったんですけど、当日はめちゃくちゃ晴れて。
なので、その日は八方からバックカントリーへ出て南面を友達と滑走。本当はその1本で終わらせるつもりだったけど、人もいなくて、あまりにもコンディションが良かったからもう一本行こうとなってドロップ。
そのあと車を走らせて一番北のコルチナへ。少しラインはあったものの、朝イチからではないのに、パウダーはまだまだ残っていて。トラバースしながら良いラインを見つけて13時すぎまで夢中になって滑りました。
最後は栂池。DBD(TSUGAIKE DOUBLE BLACK DIAMOND)のエリアは広大なので、人が行かないエリアも多く、それ狙いで滑りに行きました。で、気づいたら16時くらいになっていた日が昨季の白馬を滑っていてもっとも良かった日ですね。
あと、22−23季は五竜のナイターシーズン券も買ったので、この日に限らず、本当に朝から晩まで滑った印象はあります」
いろいろな場所を滑ることで上達し、人との繋がりも増えた
バレー券を存分に活用している大坪さんだが、このチケットを手にしてから自らにどんな変化があったのだろうか。
「一番思ったのは、フリーライドの大会の映像を見返すと、自分の滑りが安定してきたことかなと思いますね。JFOはパウダーのコンディションでやれる機会が少なく、大会バーンはみんなが滑ったりして結構ボコボコの斜面なんですね。
21−22季の映像を見ると、カービングをしているつもりだけど、スライドターンになっていたんです、止まれなくて。
それが22−23季には、結構きれいなカービングターンができていました。斜面が荒れるから長めのボードを使って安定感をつけたのも効いたのですが、そもそもそういう発想がいろんなところを滑るまではなかったんです。
山全体を見て滑っているおかげというか、パークだけじゃなくてパウダーもフリーライドも楽しんで、さらに一緒に滑る人が増えたのも成長に繋がったと思いますね。そのなかには山を案内してくれた人や映像や写真を撮ってくれた方など、新しい刺激をもたらしてくれる人もたくさんいました。
やっぱり同じ場所をずっと滑っているといろんな面でマンネリ化しちゃうし、興奮度も薄れます。白馬エリアのなかでいろんな繋がりができたのが大きいですね」
スロープスタイルやビッグエアのコンペティションで成績を残すことに重きを置きながら、パウダーやフリーライドも楽しむことで、結果としてスノーボードが総合的に上手くなり、楽しさが広がっている大坪さん。
白馬エリア全般を滑ることで、自らが作る映像の幅も広がったということで、良いこと尽くめだ。この冬も白馬をベースにする大坪さん。もちろん、23−24季のバレー券も手にするつもりだ。