積み上げてきた「五竜らしさ」という信頼|POW「サステナブル・リゾート・アライアンス(SRA)」加盟スキー場_事例紹介❹エイブル白馬五竜

POWが発起した「サステナブル・リゾート・アライアンス(以下、SRA)」に加盟し、気候変動やサスティナビリティへの取り組みを熱心に進めているスキー場を紹介するシリーズ企画。第4弾は昨年、STEEPの「THINK SNOW」コーナー新設時に登場いただいたエイブル白馬五竜だ。スキー場の営業期間以外は、希少な高山植物を保護する「白馬五竜高山植物園」を運営する株式会社 五竜。20年以上に及ぶ環境保護活動の歴史が積み上げてきたものとは?

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20年以上前から持続可能へ取り組んできた五竜

日本が世界に誇るHAKUBA VALLEYのなかで唯一ナイター営業を毎日行う「エイブル白馬五竜」。さらには土日祝限定で早朝のサンライズ営業も行っており、朝から夜まで白馬で滑りたいスキーヤーにとって極めて魅力的だ。そのスキー場をオペレーションし、夏は国内でも希少な高山植物を保護する「白馬五竜高山植物園」を運営する株式会社五竜。

五竜の環境保護は、世界にSDGsという言葉が生まれる20年以上前から始まっていた。時代に先駆けた持続可能性への取り組みは、昨年STEEPでも紹介した通りだ。

㈱五竜は2000年に「持続性のある観光事業」を目指して、白馬五竜高山植物園の前身である「五竜アルプス山野草園」を開園。白馬五竜高山植物園は今年で23年目を数える。この植物園を大切に守り続けてきた歴史そのものが、五竜の持続可能な取り組みの証だ。

白馬五竜高山植物園

実践されているSDGsの取り組み

五竜にはIS&SDGs委員会なる、SDGsに絡めて顧客満足度を高めることだけでなく、SDGsの観点で考えたり、改善案を提案していく役割を担うチームもある。その提案から具体的に行われている取り組みは、昨年STEEPで話を聴いた際には以下のようなものだった。

● 白馬五竜高山植物園の造成・整備を通じた、スキー場の自然再生への取り組み
● 地域住民や子供たち、一般、取引先や同業者に対する環境セミナー等の啓発活動
● CO₂削減につながる環境活動として、エネルギー使用の削減を目指し、CO₂排出量の算定・報告や、節電
● (公社)日本植物園協会における絶滅危惧植物の保護拠点として、希少な高山植物の保護・育成
● トレイルライダーを活用したユニバーサルツーリズツムを推進
● ゲレンデのナイター照明や施設の照明にLED照明を使用
● ゴミの分別の徹底
● レストランでの塗り箸(木曽ヒノキの間伐材)の使用を推進
● シングルユースプラスチックの使用を削減
● レストランで使用する食材の地元産を優先した仕入れ
● レストランでの廃油(食用油)を、回収・精製し、車の燃料として再利用
● お土産のレジ袋を削減、有料化し、その代金の一部は環境支援団体へ寄付
● 制作物(パンフレットその他の印刷物)に再生紙を使用
● ダイバーシティを推進し、お客様の満足度の向上や社員に教育研修を提供
● 政府の推進する国民運動「COOL CHOICE」への賛同登録   など

もっと詳しくはコチラを!

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それから1年、どのような変化があっただろうか。営業部の中野さんに聞いてみた。

ついに施設全体の電力を再生可能エネルギーに100%切替完了

今季のトピックを尋ねてみると…

「やはり今季一番のトピックスとしては、これまではナイター営業に関わる電力はすべて再生可能エネルギーで賄っていたものが、2023年12月から、すべてのゴンドラやリフト、ベースセンターのエスカルプラザやレストランや事務所など、施設全体の電力を100%再生可能エネルギーに切り替えたことです。もともと100%を早く実現したかったのですが、かなり多くの電力を使うこともあり、安定的に十分な電力が供給できるかの見極めが必要で、ようやくその見通しがついたタイミングで100%切り替えたというのが経緯です」。

白馬エリアでは唯一のナイター営業を行い、そのナイターを100%再エネ稼働していたことだけでも十分に先進的で、スキー場の理想の在り方だと感心を集めていたものが、この度の再エネ化100%だ。企業の母体がホールディングスといったグループ組織であればまだしも、単独のスキー場経営企業、株式会社五竜として、この努力と、グリーンなスキー場へのコミットメントはすごいものがある。…ということを、まずぜひユーザーには知ってほしいと思う。

再エネ100%切り替えのニュースは、信越のほぼすべての地方新聞に大きく取り上げられた。スタッフの人材確保の面でも、アルバイトの応募などは数が増えているという。五竜で働いてみたいと思ってもらえている、印象がよい、ということだろう。

リフト料金のアップもパワーに変換

こんなに賑わっているゲレンデと再エネ100%で稼働中のゴンドラ。フォルムが可愛いと人気だ。

実は、‘23-24シーズン、エイブル白馬五竜は前年から大人1日リフト券の料金が1,500円アップした。しかしゲレンデは相変わらず連日たくさんのゲストで賑わい、来場者数は堅調であるという。1,500円と大きく値上がりしても集客は上々?!これをどう分析すべきだろう。

「リフト券の料金が上がってもお客様は変わらず来てくれているので、五竜を選んでもらっているのかな、と嬉しく思います。値上げは、現実として燃料費が上がっただけでなく、五竜が積極的にやってきた環境への取り組みの推進やスタッフのワークライフバランスへの還元など、お客様が五竜を変らず楽しんでいただけることに還元し、すべてがスキー場の持続可能な流れとして連動しているので、そこをきちんと理解していただけている感覚はあります」と中野さん。

左)2/23-24に開催された2夜連続のナイターイベント 中)五竜のナイターは圧雪がきっちり入るのでコンディションは抜群  右)「五竜最高!」SNS投稿中

「現場のスタッフもリフト料金が上がっても、理由が明確なので、お客様に対しても自分たちがやっていることに自信や誇りをもって働けていると思います。スタッフの意識が上がっているというのは感じますね。『五竜って取り組む姿勢が積極的だよね、しっかり還元しようという意思が感じられる』と、長年積み上げてきたものがお客様からの信頼に繋がっていると信じています。

五竜の独特の魅力の一つに、中野さんの言うような「ユーザーを裏切らない信頼性」や、「スキー場全体の統一感」があるようだ。SNSの発信をとっても、ゲレンデスタッフの笑顔の働きぶりを見ても、心からお客様に楽しんでもらいたいという意思が強く感じられる。ここも「五竜らしさ」なのかもしれない。

左)リフトスタッフのこの笑顔! 右)リフト乗り場には手描きのメッセージボードが。これもスタッフが毎日描いている

「宣伝広告にお金をかけたり、華やかなPRをやるわけでなく、正しいことをしっかりとしていくことが一番なんですよね。サービスすべてにおいて自然が一番にあって、それを安全に楽しんでもらうこと。山の魅力を感じてもらえる正しいことを真摯にやっていれば、お客様はおのずと来てくれると思っているんです」。

五竜は風が強くてもゴンドラ・リフトをなるべく止めない。それでも止まったときは「五竜がダメなら仕方ない」とユーザーは思う。信頼の積み重ねがそう思わせるのだ。五竜の誠実さは、五竜らしさとしてユーザーの間に浸透し、高く評価されているのだ。シーズン券の購入者も増えているという。

吹雪で強風の日でも五竜なら滑れることが多いと評判

SRAへの期待感

POWと一番初めにパートナーシップを締結した五竜だからこそ、SRAに期待することは、どのようなことだろう。

「これまで単体でやっていてなかなか大きなムーブメントにならなかったことが、SRAで力を結集することで大きなムーブメントとなり、スノー業界が変わっていき、社会全体が変わっていくこと、でしょうか。もっと具体的には、横つながりで活発な情報交換できるところがメリットなのかな。例えば五竜の再エネ100%切替ではこんな効果が生まれた、かかったコストは…等、そういった情報を互いがシェアすることで、参考にしてどんどん取り組みが広がっていったらいい。そして、いつか逆に連盟体を組む必要がなくなるほど、環境への取り組みが当たり前のことになれば理想だと思います」。

五竜の考え

営業推進部のメンバーたち(中野さんは右から2番目)

「僕、実はスキーブーツも履いたことがなくて。スキーをまったく知らずに、こうして受け入れてもらえる環境もすごく五竜っぽいと思います(笑)。僕のいる営業部推進部は、半分は外国籍のスタッフなんです。お客様も海外からを含めて様々なので、多様性を大切にするマインドがないと発想も動きも凝り固まってしまいますから」と笑顔の中野さん。

「五竜にとって再エネ100%はゴールではなくて、これからまだまだいろいろやっていかなくてはと思っているんです。レストランの提供する食事の地産地消、スタッフのユニフォームをもっと環境に配慮した素材を使うとか、気候変動の講習会を外に向けても開催したり、夏場にも何か企画したい…。エイブル白馬五竜は、HAKUBA47と一緒になると長野県内ひとつの山の来場者数ナンバー1で、影響力も大きい。なので、我々が取り組みを推進することで、他のスキー場さんもやりやすくなるのかなと。それは先陣を切った五竜の使命でもあるかなと思っているんです」。

五竜の取り組みの姿勢や考え方はとても個性的で「五竜らしい」。その実際をぜひ体感しに、エイブル白馬五竜に行ってみないか。

教えてくれた人

中野比呂志さん
Nakano Hiroshi

株式会社五竜 営業推進部

千葉県出身。O型、末っ子。2児の父。地元高校卒業後、アメリカに留学。何度かの転職を経て、10年間アウトドアメーカーにて勤務。その後、コロナ渦に長野県に移住を決意し、スキー未経験・ボード初心者にもかかわらずスキー場で働き始める。営業推進部にてスキー場の価値を上げる活動に邁進中。

Information  エイブル白馬五竜
◆公式サイト:https://www.hakubaescal.com/winter/
◆公式SNS:InstagramFacebookYouTube

取材協力/株式会社 五竜・POW JAPAN

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ホームゲレンデやお気に入りの、思い出の詰まった大好きなスキー場でこの先も滑り続けたい。
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POW JAPANは、本キャンペーンで皆さんが回答してくださった「応援したいスキー場」へ「SUSTAINABLE RESORT ALLIANCE」への加盟と脱炭素化・サステナブル化に向けたサポートを提案いたします。

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今後のシリーズ掲載スキー場(予定
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Information  POW JAPAN
◆公式サイト:https://protectourwinters.jp/
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