教えてくれた人 : 田畑智之( bottomline) 構成 : STEEP編集部
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歴15年以上・メンテナンスのプロフェッショナル
「bottomline」の田畑オーナーに教えてもらおう
このシリーズは、プロショップ「bottomline(ボトムライン)」のオーナーの田畑智之さんに、「もっと気持ちよく滑れるようになる」ためのチューンナップのノウハウを教えてもらう企画。今回のテーマは、滑りを変えるくらいの影響力を持つ「エッジの扱い」。いよいよシーズンイン、雪上に出るための準備にぜひ活用してほしい。
❖ このシリーズ企画のスタートはコチラ(Topic_1)をご覧ください
今回は「エッジの扱い」について
3回目の Topic_3は
「滑りが変わるエッジの扱い」。スキーに乗っていて「エッジがひっかかる」感覚はすぐわかるけれど、どう手入れしたいいのか、自分で確かな知識のないままエッジをいじるのは、さすがにちょっと怖い。そこで、チューンナップのプロフェッショナルに「エッジ」について伝授してもらおう。
エッジと滑走面の関係~板の回し易さ~
Topic1で、「クルマでいうステアリングの遊び」という表現を使った。何を伝えたかったか、と言えば、エッジでも特に滑走面側のベースエッジ、これのビベリングと呼ばれる角度付けが板の取り回しに影響するということ。
滑走面はフラットじゃなきゃNG、という話を耳にしたこともあるかもしれませんが、ことフリーライドではむしろフラットにしない、というのも一つの選択肢としてありです。ベースエッジのビベリングの量で大きく変わります。
ベースエッジのビベリングで板の取り回しが変わる
この画像の赤丸の部分をよく見ると、左右のエッジの光の洩れ方が異なります。向かって左はビベリング強め、右が弱め。光の洩れ方が違いますね。
もちろん、わざと同じ板の左右のエッジを変えていますが、これはあくまでも撮影用、普段こんなことはしません。当然左のほうが回しやすいし、いわゆる面を使った滑りをしやすい。
さらに左では滑走面からエッジへの連なりが強く、その性格が強くなります。対して右だと、主にエッジのみをビベリングし、滑走面はフラットに近く仕上げてあります。
ついで、極端な例としてコンベックスソール形状に設計、最初から製品化されているものもあったりします。写真は過去に当店オリジナルでリリースした「CYCHO JPL」というスキー。すでに完売したモデルでありながら、今も根強いファンの多いモデルです。
ベースエッジを強めに入れたら、サイドエッジも合わせる
ベースエッジを強めに入れたなら、サイドエッジもそれに合わせて入れます。そうしないと鈍角になってしまうから。このサイドエッジこそ、いわゆるエッジングの要。噛むという点の多くの部分をつかさどります。
とはいえ、立て過ぎも考えものです。鋭角になればなるほど「刃こぼれ」が起きやすくなり、必要に応じて頻繁に研ぐ必要があります。
滑りに合わせてベースビベリングを調整するのもひとつ
二輪車のタイヤは丸い。対して四輪車のそれは平たい。これは、それぞれターン(コーナリング) の性質が異なることからきているもの。であれば、例えば二輪車的に乗るのであれば、このベースビベリングを強め (↓写真の左側) にし、四輪車的に乗るのであればそれほど強めない (↓写真の右側)、などもひとつの方法。
身体を倒しこんでのオートバイ等のターン、対して基本的にフォールラインに胸を向け外向姿勢の強い四輪車的なターン、そんな姿と自分のスキーの滑り方、このあたりを重ね合わせて想像してみると面白いかと思います。
ワックスで滑走性を得て、
TUNE-UPで操作性を自分のスタイルに合わせる
つまり、ワックスで滑走性を得て、TUNE-UPで操作性を自分のスタイルに合わせる。特に後者のTUNE-UPは、決して一方通行のブラックボックスにならないよう、ユーザーと板を仕上げる側とのコミュニケーションが大切。
まとめ
時に意識してみたいのが「固定観念の打破」
乗り方に関しては特に自由でありたいと思う
そこにTUNE-UPがはまると、最高に楽しい瞬間が訪れるよね
そして時に意識してみたいのが「固定観念の打破」。フリーライドを文字通り解釈すれば、そこにたどり着く気がします。
ワクシングは素材と雪との関係性ゆえ、ある程度の決まり事は踏襲する必要がありますが、乗り方に関しては特に自由でありたいと思いますよね。そこにTUNE-UPがはまると、最高に楽しい瞬間が訪れます。
bottomline
http://bottom-line.jp
「店の名前を「bottomline(ボトムライン)にしたのは、「トップ・トゥ・ボトム」の滑走ラインをイメージして、というのともうひとつ、アスリートのようなトップ層が技術を追求する店というよりも、ボトム層まで含む普通のユーザー向けの店にしたかったから。街のバイク屋さんのようにエンジン音を聞いて、“ここ、調子悪い原因なんじゃない?”なんて感じで、誰もが気持ちよく乗れるように、今後もいろいろ相談に乗りたいね」
Profile
田畑智之 Tomoyuki Tabata
1967年生まれ、千葉県出身。90年代後半、当時自由が丘にあったスキーショップに在籍。その後TUNE-UPを学び、それらを融合させた店「bottomline」を2004年にOPEN。